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リュカ伝の外伝
解ってはいるけど止められない事もある
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(グランバニア城)
ウルフSIDE

先程、俺は厄介な事に発展するかもしれない情報を手に入れた。
正直、まだ情報の量が少なく、何一つとして確実な事は言えないのだが、優雅に構えて大事(おおごと)になってから行動したのでは遅いかもしれないから、不確定な情報でもリュカさんに伝えておかなければならない。

何時もの様にリュカさんに“国王の署名”が必要な書類を渡し、署名が終わるのを待っている。
全ての書類に署名が終わり(もしくは承認できない場合も)、リュカさんからの連絡事項が無い事を視線で読み取り、俺の案件を伝える。

「リュカさん……もしかしたら、今この国で厄介な宗教が流行り始めてるかもしれません」
「“厄介な宗教”? それにしても随分とフワッとした情報だな。何時ものお前らしくない」
何時もならもっと情報を集めてから報告するから、リュカさんも一層怪訝な表情を見せてくる。

「先程……本当に先程察知した情報なのですが、俺の部下にもこの宗教に傾倒している者が居る様なのです」
「そうか……でも、宗教対策は法的にも万全だろ?」
そう、我が国は宗教に厳しいのだ。

宗教法人として国に登録しなければ活動はさせないし、登録すれば高い税率を課せられる。
常に監査と監視を行っており、危険な思想と感じたら、最悪は国家反逆罪まで適用される。
まぁそこまでのテロ組織はそうそう居ないけど。

「ですが、その対策をすり抜けてるかもしれないのです」
「結構監視の目が厳しいのに?」
リュカさんも驚いてる様子だ。

「本拠地を持たず……と言うより発見させず、王都を中心に近隣の村や町へも浸透してる、そんな団体らしいです」
「“らしい”とは?」

「はい。団体として体を成してる様には見えないのですが、その実熱心な信者が増えているのです」
「そ、そんな事があり得るのか?」

「正直解りません。もしかしたら完全秘密主義で、信者等の口も堅くなってる……もしくはその様に洗脳してるのかもしれません」
「洗脳か……ん? じゃぁウルフは何で気付いたの」

「先程も言いましたが、部下にも何人か信者が居るのですが、詳しく聞いても何も答えないのです。ただ『宗教じゃ無いですよ』とヘラヘラ笑うだけで……」
「うん、だから……その部下が信者だと思った訳は?」

「あぁそうですね、それを説明しなきゃダメですよね」
話を先に先に進めようとしすぎて、肝心な部分を話し忘れた。
いくら俺とリュカさんの間柄でも、話さなきゃ解らない事はある。

「実はですね、その部下が奇妙な念仏の様なモノを唱えていたのです。そしてそれに釣られる様にして他の部下も同じ念仏を……」
「そ、そうか……祈りの時間的だったのかもな」

「その念仏が実に奇妙で……凄く頭に残るのです
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