暁 〜小説投稿サイト〜
天才少女と元プロのおじさん
夏大会4回戦 アンツ??????馬宮高校
30話 1番センター三輪正美
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ふわりと浮き上がる。

 ファーストは白球にグラブを伸ばすが、打球はその先を通過し内野グラウンドへ落ちた。セカンドが白球を拾うが何処にも投げることができずオールセーフ。正美は先程の走塁に続いて技ありのプッシュバントを披露した。

 打線は再び繋がりを見せ、この回4点を加える。

 先発の息吹は4回、ピンチを迎えながらも無失点。4イニング0失点の好投でマウンドを正美に譲った。






 バックネット裏のスタンドに梁幽館高校の制服に身を包んだ乙女二人が座っていた。野球部主将の中田 奈緒にマネージャーの高橋 友理である。

「コントロール良いですね。ストレートも速くはありませんが、伸びは良さそう。緩急を使って打たせて取るピッチング。武田さんと比べると見劣りしますが、山崎さんのリードも相まって簡単には打ち崩せないでしょうね」

 友理は正美のピッチングをそう評価する。

「ああ。それにしても、三輪さんから今日の試合で投げると聞いたときは驚いたよ」

 今日の試合を見に来ることは中田があらかじめ正美に伝えており、その時に正美自身から二番手で投げることを知らされた。

「センター、ショートに続いてピッチャーですもんね」

 先の試合前での守備練習にて、正美は最初センターでノックを受けていたが、途中からショートに移動している。最終回に守備についたのもショートだった。

「本人曰く一通り守れるから決まったポジションは無いらしいぞ」

 中田はLIONEで正美の本来のポジションについて聞いたのだが、デフォルメされたハリネズミのアイコンから飛び出した吹き出しに“決まったポジションは無いですねー。一通り守れるので欠員が出たり、代打や代走で出たらそのままそこに入ります!”と表示されていた。

「全ポジションですか!???????三輪さんがうちのベンチに居てくれれば、もっと思いきった起用ができましたね」

 梁幽館の控えにはバッティングが買われてメンバーに選出された者がいる。そういった選手は多少お粗末な守備にも目を瞑られているが、その守備力故に出場機会も限られていた。だが、もしも梁幽館に正美のようなユーティリティプレイヤーが一人居たのなら、そういった選手達をもっと積極的に起用できる。守備で立たせる事なく交代してしまえば良いのだから。

「でも、いくらスーパーサブの適正が揃ってるからといって、三輪さんを差し置いて初心者二人をレギュラーにする理由が分かりません」

 高橋は正美を知れば知るほど、彼女が控えにいる理由が分からなくなる。

「??????そうだな」

 実は中田は新越谷との試合の後、指揮官の芳乃にその理由を聞いていた。

――自分がレギュラーになる事で誰かを悲しませたくない??????三
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