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SHUFFLE! ~The bonds of eternity~
第一章 〜再会と出会い〜
その四
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ったく……」

 出会ったばかりのあの頃、彼がこのようになるなど一体誰が予想しただろうか? だが稟は知らない、いや気づいていないと言うほうが正しい。彼がこのようになった原因の多くは稟にある、ということを。そしてそのことを彼は深く感謝しているということを。

「稟」

「ん?」

 今度はなんだ? と言わんばかりの口調で答えた稟。しかし、彼の口からでたのは稟の予想だにしない言葉だった。

「すまなかったな、大変な時期に近くにいられなくて」

「……何言ってるんだ。親の仕事の都合だろう?」

「それでもだ。何かできることはあっただろうからな」

「……」

「悪いな、嫌なこと思い出させちまったか?」

「いや……そんなことはないさ」

 それに、と続ける。

「桜とは手紙の遣り取りしてたんだろ? 自分からは言わないけど、桜も結構きつかっただろうからな」

 当時、桜は稟と楓の間で板挟み状態だった。きっとつらい想いをしただろう。彼との手紙の遣り取りが支えになっていた部分もあるだろうことは稟にも察することができた。

「とはいえ、それも俺が一方的に打ち切ったんだけどな」

 そう言って苦笑する。稟も楓もそのあたりの事情は今日聞いていたが二人に彼を責めることなどできなかった。肉親を失う悲しみや辛さを、二人ともよく知っているから。


          *     *     *     *     *     *


「しかし、でかい家だな」

 彼は芙蓉家の両隣に立つ、片や西洋風の館、片や和風の屋敷を見てそんな声をもらした。

「一体どういう連中が住んでるんだ?」

「まあ、すぐに分かると思うぞ」

「?」

 頭に疑問符を浮かべた彼に三人は小さく笑った。

「あれ、鍵が……」

「楓? どうした?」

「鍵が開いてるんです。ちゃんと戸締りしたんですが」

 “完璧超人”などとよく呼ばれる楓だが、こと稟が関わることとなるとよくドジをすることで有名だ。しかし、戸締りを忘れるようなミスをすることはまず無い、と言っていい。

「リムちゃんが帰って来たんでしょうか?」

「楓ちゃん、シーッ!」

「リムちゃん?」

「ああ、いや、なんでもないんだ」

「と、とりあえず中に入りましょう」

 そしてそこに待っていたのは彼のみならず稟達三人も驚く人物だった。

「み、幹夫おじさん!?」

「お、お父さん!?」

「やあお帰り楓、稟君。それに桜ちゃん、久しぶりだね」

「お、お久しぶりです」

 芙蓉幹夫。
 楓の父親であり、愛する妻、芙蓉紅葉と学生時代からの親友である土見鉢康・紫苑夫妻――稟の両親――を事故で失った後、里親と
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