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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
こゝろ
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がら、彼は「申し訳ないけれどもね」と前置きをする。


「遠山くんと星伽さんはね、毒にやられちゃったでしょ。解毒剤は投与したんだけれどもね、その経過観察ってことで、あと1日だけ様子を見さしてくれるかい」
「素人が何も言えやしませんから、医師の意嚮に従いますよ」
「うん、ありがとう。因みに2人とも至って普通だよ。健康そのものだから心配は無用だ。……しかしね、ちょっとだけ、僕は気になることがあるんだ」


「あー……、遠山キンジくんだがね」老医は声の調子を落としながら、そう付け加えた。


「君たちは地下倉庫で敵と交戦した。その時に遠山くんと星伽さんは毒をもらった。星伽さんは、峰さんという女の子に連れられて来たわけだろう。どうして同じに毒をもらった遠山くんも連れてこなかったんだい。彼自身の口から、はっきりと、大丈夫だと言われたからかい?」
「……えぇ、そうですが」


聞くところ、どうやら老医は白雪と共にキンジを搬送しなかったことを、疑問に思っているらしい。しかしその口ぶりは、『本人が大丈夫だと言っているから、別段、搬送しなくても良いというわけではない』といったような内容の説教でないことは、何となく察しがついていた。それとはまた別を話すのだろうということにのみ、察しをつけていた。


「ふぅむ……、本人からも話は聞いたがね。最初は毒で危うかったが、どうやら交戦の最中に、毒の効果を全く感じなくなったと言ってるんだけどもね。結果的に何ともないから良かったけども、僕らの方でも念のため、解毒薬の投与とその経過観察を本人に課したわけだ。この遠山くんの身に起きた不可思議な現象がどんなわけか、君はご存知かね?」
「……いいえ、何も」


老医のその言葉には、もはや首を振るしかなかった。

……確かに俺たちは《境界》で地下倉庫まで赴いた。しかしそれには、割り入るための絶妙な機会が必要だったのだ。魔剣ことジャンヌ・ダルクが、毒に侵されたキンジと白雪を本気で殺めようとした時──その隙を狙って、奇襲を仕掛けるはずだった。
けれど、読みと現実は違った。その読みがキンジによって外されたのだ。毒に倒れたという事実を錯覚だと思ってしまうほどには、彼は平生よろしく──むしろ平生以上に立ち回っていた。

そうしてキンジは、毒の有るはずのその身体で闘えると言ったのだ。思い出せば思い出すほど、摩訶不思議な現象だろう。キンジ本人がどう類推しているのかは定かではないけれども、否、そうであるが故に、こちらとしては摩訶不思議としか言い様がない。

ましてやこの老医も、自らの師事された医学を真っ向から否定されたようなものなのだから、さぞ不可思議な事案だと思っていることだろう。この問いの裡面には、それが見える。
白衣のポケットに両手を突っ込み
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