暁 〜小説投稿サイト〜
MOONDREAMER:第二章〜
第三章 リベン珠
第12話 THE LUST 1/4
[3/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
。いくら獏が危険な存在とは言えど、勇美の振る舞いはそれを考慮しても異質だったからだ。
(あっ……!)
 そして、鈴仙は気付いたのだ。自分は『その場』に直接立ち会ってはいなかったものの、同じ永遠亭に住まう者として、例の出来事の話はしっかりと聞いていたのだから。
 加えて、その時勇美が依姫と彼女の神降ろしにより適切な対処を受けて大事には至らなかったものの、勇美が『地上と月の境界で生まれた精神集合体』によってえげつない目に遭わされた事も抜かりなく聞かされていたのである。
「……」
 そこまで考えを巡らせて鈴仙は合点がいったのだ。今いるこの秘密の通路は地上と月を繋ぐ精神世界。そして勇美は今目の前に現れた存在をもしかしたら『奴』ではないかと思っているのではと。
 無論『奴』とこの獏は姿形が違う。しかし、『奴』は決まった姿形を持っていなかった為、今の見た目で判断するのは愚の骨頂と言えるだろう。
 そうと決まれば鈴仙は言っておかなければならないだろう。
「勇美さん、確かに獏は危険な存在だけど、少なくとも『あなたが思っている存在』とは違うものだから、そこまで警戒する必要はありませんよ」
「! 鈴仙さん……」
 勇美は鈴仙にそう言われてハッとなってしまった。今正に自分が考えていた事の的を見事に射抜かれたからである。
 勇美がそう意表を突かれている所に、鈴仙は優しく彼女の肩に触れながら言うのだった。
「ごめんなさいね勇美さん、すぐに気付いてあげれなくて。普段おちゃらけていても、あなたにだって辛い思いをする事がない訳がないものね……」
「……鈴仙さん」
 その鈴仙の気配りに勇美は嬉しくなって、少し涙ぐんでしまう。そんな勇美に対して鈴仙は続ける。
「それに『仲間』ってのはこういう時に助け合うものでしょう。勇美一人で気を張らなくていいのですよ」
 勇美は鈴仙の言葉一つ一つが胸の中に浸透していき、優しく溶けて包まれるような心持ちとなっていった。
 そして、勇美はその言葉に寄り掛かるのではなく、後押しされる気持ちとなっていたのだ。
 それが仲間において一番大切な事だろう。仲間とは拠り所になれど、結局最後に立ち向かうのは他でもない自分自身なのだから。
 故に勇美は鈴仙から自らの力で恐れを振り切る切っ掛けを受けたという事だった。
「鈴仙さん、ありがとう。お陰で気分が楽になりましたよ」
「それは良かったですよ勇美さん。それじゃあ、今から一緒に戦いましょう」
「はい!」
 ここに勇美と鈴仙の絆は強くなっていたのだった。
「……」
 それを遠巻きに見ていた獏は色々な思いを馳せていた。──何やらこの者達には深い事情があったのだと。そして、その事に関しては自分が介入する余地はないだろうと。
 なので、彼女は自分が成すべき事の為に簡潔に話をしようと思っ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ