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MOONDREAMER:第二章〜
第三章 リベン珠
第12話 THE LUST 1/4
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だから違うって……」
「いや、誰よそれ?」
 勇美のしょうもない発言に、鈴仙と今しがた現出した存在は口々にツッコミを入れたのであった。
 そして、一頻りツッコミを浴びた勇美の意識はその出現した者へと向かった。
 その者は濃い紫色の髪をショートヘアにし、そこにパチュリーやレミリアとは違う、三角帽子型のナイトキャップを被っていた。
 頭の様相だけでもそのようにやや特徴的だったが、特筆すべきはその首から下であろう。
 その姿は実に奇抜であった。まずは、普通は寝間着にしか使わないようなネグリジェを着込んでいたのだった。しかも、パチュリーのようにネグリジェ『風』ではなく、正真正銘のネグリジェであったのだ。
 更に注目すべきはその露出度であろう。まず半袖が目に付き、加えて素足の覗く脚部が艶めかしい。挙げ句の果てに胸元が惜しげもなく開いて、そこから女性の魅惑の一つである肉の谷間が覗いていたのだった。
 詰まる所、勇美の肉欲が望むままの理想の完成図がそこにはあったという事だ。
 勇美がそのような自分の欲望と向き合っている中で、対して鈴仙は目の前の存在に恐れ慄きながら呟いた。
「まさか……『(ばく)』がこんな所に……」
「えっ……!?」
 その鈴仙の言葉を聞いて勇美も便乗するかのように慄いた。ただし……。
「な、何で『飢狼伝』の作者様がここに……!?」
 このように、いつもの勇美らしくその論点はおかしかったのだった。
 取り敢えず鈴仙はツッコミを入れておいた。
「その獏とちゃうわ!」
 そして、獏とは生き物の悪夢を食べてくれる存在だと鈴仙は付け加える。
「あ、ああ……そっちの獏さんですね」
「普通先にそれを思い浮かべるものですよ……」
 どうひいき目に見ても間違えるなら、動物園で見掛ける黒と白の体毛の生き物までだと鈴仙は頭を抱えるのだった。
 だが、そんなコント染みた思考もここで振り払っておかなければならないのだ。
「何で、夢の中で一番危険な生き物が私達の目の前に……」
「危険……あっ!」
 その言葉を聞いて勇美はハッとなった。その理由はこの場所にあったのだ。
 この場所は地上と月を繋ぐ存在である。しかも、精神世界なのである。
 地上、月、精神。このキーワードから勇美の脳裏にある事が思い返されていった。──決して思い返したくない忌まわしき記憶であるが。
 確かにあの時、『あれ』は葬られた筈。でも、今の目の前の存在が『あれ』ではないと思い切る事が勇美には出来なかったのだ。
 その事により勇美は今さっきまでのふざけた振る舞いが一変し、緊張がその表情に張り付いていた。
 そんな勇美の様子に鈴仙はいち早く気付く。
「勇美さん……?」
「あ、鈴仙さん。すみません……」
 勇美の鈴仙への返し方は、明らかに異質なものだった
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