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幻の月は空に輝く
名門の肩書きは面倒だ
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お前は使った感想を俺に言う。俺はそれで改良が出来る。互いの利だろ?」
 何の事はないとばかりにあっさりと言ってのけた私に、ネジは言葉がないらしい。どうやら日向一族だからと、特別扱いもされているけど色眼鏡でも見られているんだろう。流石木の葉の名門。色々と面倒そうだなぁ。
 しかしこれで言葉は終わりじゃないと、珍しく長い会話に挑戦してみる。

「俺が気に食わない相手だと思えば、武器は打たない。例え影の名を持つ長であろうと、名門であろうともな」

 寧ろそんな事で面倒になったら、里から旅立って終わりです。
 まだ忍者じゃないし。抜け忍でもないし。後十年程経てばミナトさんもクシナさんも傷は癒えるだろうし。そしたら堂々と帰れるだろうしね。
 何を馬鹿な事を言っているんだとばかりの私の態度に、ネジの肩から力が抜けた気がした。

「はっ…はは。日向に取り入ろうとは思わないのか?」

 むぅ。まだ言うか。
 まったく…。

「馬鹿、か?」
 右腕を伸ばして、ネジの額にデコピンをかます。
 私の動きについてこれなかったのか、痛みが走った後に額を押さえたネジが、今度は別の驚きを瞳に宿しながら私を見た。
 まぁ…馬鹿と言われたのも初めてだろうけど。日向の天稟の持ち主だしね。しかし、私から見たら全然子供です。自分の感情の出し方も分からない子供は、スキンシップで大好きだよーって伝えまくりたくなる。友達からは過度過ぎるから!と突っ込まれた日中時間問わずなスキンシップ。
 基本子供は大好きさ。素直な子も捻くれた子もね。可愛いし。
「取り入った所で面倒だ。俺は俺の好きなものを作る。それだけだ」
 というわけで、ネジが日向であろうとなかろうと、私にはまったく関係ありません。
 そう言い切れば、ネジの表情が何とも言えないとばかりに歪んだ。
 
 ……周りに碌な大人がいないのか?

 そんな疑問が沸くには十分なネジの反応に、私はどうしたものかと一瞬頭を悩ませるが、あっさりと結論を出す。
 悩んだ所で答えは同じだ。

「アンタが気に入れば俺の所にくればいい。俺もアンタを気に入れば作るさ」

「………」

 ぶっちゃけ、友達になりゃ無料で作るって言ってるようなものだけど。

「はは。変な奴だな」

 お腹をかかえて笑いを漏らすネジに、言われた言葉は引っかかるものの笑わせておく。
 何ていうかさ…久しぶりに笑ったって顔……。

「アンタに言われたくはないが……俺は夜月ランセイ。自己紹介がまだだったな」

「あぁ…俺は日向ネジだ」

「そうか。今から作るか?」

 自己紹介は終了。
 クナイが一本で足りるわけがない。
 というわけで聞いてみれば、やっぱりネジは笑ってた。

「ま…マイペースな奴だな」


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