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非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜
第100話『予選E』
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「もう、やるしかないか……!」


どうやら考える暇はないらしい。遅れを取らないよう、結月もまた競技に戻るのだった。







「はぁっ……はぁっ……!」

「へぇ。やるね、三浦君」


息を荒げながらも、晴登は必死で眼前の人物を追いかける。その人物は跳ねるような軽やかさで走るのだが、そのスピードの速いの何の。この短時間で、ざっと20人は抜いただろうか。おかげで晴登はバテバテなのだが。
それなのにその人物は、後ろを振り返りながら涼しい顔で淡々とそう零した。


「でもそのペースじゃ、すぐにバテるんじゃないの?」

「こうでもしなきゃ……勝てませんから……!」


風香の問いに、晴登は途切れ途切れ答えた。
そう、勝つためには無理をするしかないのだ。もちろん潰れてしまったら元も子もないけど、それでも限界ギリギリには頑張りたい。
そう思って答えたが、風香は特に何の興味なさそうに、「そう」と一言だけ返した。……と思いきや、


「じゃあ1つアドバイス。君の風の使い方は悪くないけど、走る時はもっと姿勢を正した方が良いよ」

「……え?」

「聞こえなかった? 背筋、伸ばしてみて」

「は、はい」


いきなりのことに戸惑ったが、晴登は言われた通りに前傾姿勢だった身体を起こす。すると不思議なことに、さっきまで辛かった呼吸が少し楽になったのだ。


「魔術も大事だけど、これはマラソン。走る姿勢も気をつけないと」

「なるほど……」


魔術を意識していたのと、風香を追いかけることに集中していたのとで、あまり姿勢を気にしていなかった。しかし、それではこのレースは乗り切れない。全力なことに変わりはないが、少しでも楽ができるなら儲けものである。


「あの、アドバイスありがとうございます!」

「いいよ、これくらい。君の覚悟が伝わったから」

「覚悟……ですか?」

「勝ちたいんでしょ? なら私について来なよ。ついて来れるなら、だけど」


そう言って、風香は薄笑いを浮かべた。初めて見せたその表情の変化に、晴登は思わず目を奪われる。
しかし次の瞬間には、風香はさらに加速を始めた。


「置いてかれて……たまるか!」


ここが踏ん張り時だと、晴登は己の身体に鞭打ち、風香の後に続くのだった。





森の中では様々な音が飛び交い、あらゆる場所で熾烈な戦闘が繰り広げられていることは容易に想像がつく。
ここにも1人、焔を纏った刀を振るう少女がいた。


「はぁっ!」


その一声で、モンスターも草木までも燃え尽きる。その焔の中心に立つ人物──緋翼は、周りに敵がいないことを確認してから、汗を拭って一息ついた。
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