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MOONDREAMER:第二章〜
第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第79話 あの人からのお招き2/3
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 ──迷い家──
 それは人間が山で遭難した時に辿り着くと言われている、謎の多い場所である。
 そして、その場所の様相はどこか昔懐かしい日本の田舎の村々を彷彿とさせる造りなのだ。
 そんな未知の世界にも陽の光は届いているのだ。故にこの迷い家も夕日に照らされて神秘性を引き立てられていた。
 その場所の一角の家の中にて、このような会話が聞こえてくるのだった。
「紫様、もうすぐあの者達が来られる頃ですね」
「ええ藍、今から楽しみだわ」
 それらの会話をする者達は、九尾の狐の八雲藍と、その主の大妖怪八雲紫その人であった。
「それにしてもお言葉ですが紫様、あなたが境界で直接迎えに行った方がよろしかったのでは?」
 と、藍はもっともな指摘を紫にする。来客を迎えるのは、おもてなしの基本ではなかろうかと。
 そんな至極真っ当な意見を出す藍に対して、紫はちっちっちと指を振りながら言う。
「藍、分かってないわね」
「と、言いますと?」
 的を得た発言の筈なのにダメ出しをされてしまった藍は当然納得出来ずに聞き返す。
「考えてもみなさい。ラスボスが自らの城に主人公を招待なんかしたら興醒めでしょう」
「はあ……」
 紫が語り始めたこだわりに、藍は分かるような分からないような態度で示した。
「冒険ものってのは、自分の足で突き進んでいくから面白いのよ。心得ておきなさい」
「はいはい」
 よもや自分には理解出来ない領域の話だろうと踏んだ藍は、それ以上考えるのをやめたのだった。
 その一方で、この方の演出家としての感性はかなり優れているのだろうという考えも浮かんでくるのだ。
 現に、彼女の奮闘により幻想郷を護るために必要な事である綿月姉妹のヒーロー性を見事に確立したのである。
 それには依姫と対峙させた霊夢達のみならず、自分自身も利用して見せたのだ。それは、自然な感性や自尊心に囚われては出来ない事であっただろう。
 やはり紫様には敵わないものがある。そう藍が感慨に耽っていると外から声がするのだった。
「紫さま、藍様、ただいま〜」
 そう言って八雲家へと戻って来たのは猫又の少女、橙であった。
「おっ、橙が帰って来たな?」
 誰よりも橙を溺愛している藍は、心弾ませながら我が子同然の存在の帰還を喜ぶ。
 そして、藍と紫は自宅の玄関へと足を運んだのだ。そこには今ここに戻った橙の姿があった。
 その愛しい存在を目にした藍は、少し苦笑いを浮かべていた。
「橙……、大分汚れているなぁ」
 そう藍が指摘した通り、橙は全身が泥まみれとなっていたのである。
「うん、今日はたくさん遊びましたから〜」
 そう無邪気に返す橙。対して藍はそんな橙を憎めないと感じて言う。
「ああ、子供はよく外で遊んでこそだからな、胸を張っていいぞ」
「藍さま〜♪」

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