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ナイン・レコード
ちいさなしまのおはなし
てんしさまのおはなし
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深い霧に包まれたムゲンマウンテンの頂上から、悍ましいほどに濃厚な闇の気配が漏れ出している。
山肌に沿ってゆっくりと流れていく闇の気配は、気性の荒いムゲンマウンテンに住みつくデジモン達でさえも凍り付かせた。
周りの森を一部残して、ファイル島は砕けたクッキーのように残骸が流されていく。
森の一部を残して聳え立っているムゲンマウンテンでは、取り残されたデジモン達がなるべくムゲンマウンテンから離れようと島の端に集まっている。
本能的に、悟っているのだ。
頂上に君臨している者は、自分達では到底敵わない相手なのだということを。


ムゲンマウンテンの頂上に、古代ギリシャや古代ローマを思わせる、神殿のような建物が建っている。
しかし闇を凝縮したような雲が空を覆い、濃厚な霧が立ち込めているせいで、神聖さが全く感じられない。
神殿の中も、天使ではなく悪魔のような風貌をした彫刻が首(こうべ)を垂れて、神殿の主に跪いているような、禍々しさを醸し出している。
その神殿を反響して、不気味な笑い声が響いた。

『選ばれし子どもと言っても、1人1人の力など知れたもの……1人残らず血祭りにあげてやるわ!』

神殿の奥、玉座に佇む1つの陰。
その背には蝙蝠の翼が生えており、闇の衣を全身に纏い、赤い目の奥に暗い野望を秘めている、まさしく悪魔に相応しい姿をしていた。
空気を裂く音を置いていきながら、悪魔……デビモンの前を、黒い歯車が飛び去って行く。



《………………………………………………………………………………………………キシッ》



何処かで、闇が笑った気がした。






白や水色、それからほんのちょっとのピンクとか赤とかオレンジ色。
ヒカリの世界では絶対に見られない光景に、こんな状況であるにも関わらずぼんやりと見とれていた。
お日様はすっかりてっぺんまで登っていて、木々に挟まれて生まれた空の道から燦燦と照らしている。
時折聞こえてくる鳴き声に反応して、その度に立ち止まってしまうけれど、パートナーのプロットモンが大丈夫って声をかけてくれる。
肺いっぱいに吸い込んだ空気は少し冷えていた。
ここに来てからすっかり見慣れてしまったはずの光景が、何となく寂しい。

「ヒカリ?どうしたの?」
「……ううん、何でもないよ、なっちゃん」

ぼんやりと立ち止まって空を見上げていたら、隣にいる子が話しかけてきた。
振り向く。心配そうに見つめてくる瑠璃色の目。ヒカリはにこっと笑って首を横に振った。



大きな館を見つけて、昨夜はその館で休んでいたヒカリ達だったが、夢見が悪くて兄の寝床に忍び込んだ直後には、何もかもが変わっていた。
ヨーロッパのお嬢様が住んでいるような、メル
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