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ちいさなしまのおはなし
てんしさまのおはなし
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ヘンチックな絵本に出てくるような、素敵な館。
お兄ちゃん達はみんな、警戒しながらもまともな寝床を見つけたことですっかり安堵していたけれど、ヒカリ達最年少の3人は、何処か薄気味悪いものを感じて、始終落ち着きがなかった。
でも自分達は2年生だし、ここは嫌だと言ったところでその意見が聞き入れてもらえないだろう、ということは目に見えていたので、何も言えなかった。
もしもあの時、兄に叱られることを覚悟しながら、3人で一緒に主張していれば、少しは違ったかもしれない。
でも3人はしなかった。できなかった。
その結果が、“コレ”だ。
デジモン達が強烈な悪意を感じて飛び起きたことで、意識を強制的に引きずり出された子ども達の目に飛び込んできたのは、満天の星。
荘厳な館の天井は、何処にも見当たらなかった。
それどころか、豪華な館の姿形すらなくなっていた。
ボロボロの壁と床、遮るものがなくなった濃紺の空。
みんなで混乱していたら、そのうちベッドが宙に浮きだし、空を駈けていた。
これが何でもない日常なら、メルヘンチックで片付けられていただろうに、今ヒカリ達は誰も頼れる人がいない中、過酷な環境を生き抜かなければならない異世界の冒険の真っ最中であった。
振り落とされるかもしれないという恐怖で引きつりながらベッドにしがみついていたら、ヒカリ達が冒険をしていた小さな島が、バラバラに散らばったのを見た。
離ればなれになっていく仲間達。
そしてヒカリ達は、引きちぎられた小さな島の一片に、不時着したのである。


朝になるのを待っていたヒカリとプロットモンは、壊れたベッドのシーツに包まって一夜を過ごした。
プロットモンは、見張りは自分がやるから寝てていいよって言ってくれたけれど、ヒカリはその申し出を辞退した。
眠れなかった。眠れるわけがなかった。
いつもお兄ちゃんが、大輔くんが、賢くんが傍にいてくれたのに、みんなバラバラになっちゃって、一人ぼっちになっちゃって、眠れるはずがなかった。
眠くて眠くて何度か船を漕いでいたけれど、ガサリと近くの茂みが揺れるたびに、ヒカリはびくーって肩を震わせて眠気が吹っ飛んでしまう。
お日様が昇って空が白んできて、ヒカリはようやく安堵した。
普段着に着替えて、パジャマは畳んで手に持って、さあこれからどうしよう、って相談をプロットモンとする。
結論から言えば、太一達を探すのが手っ取り早い、ということだったので、2人はとりあえずベッドが来た方角を目指すことにした。
プロットモンはまだ進化が出来ない。
もしも野生のデジモンと出会って、そのデジモンがとっても好戦的なデジモンだったら、逃げるしかない。
ヒカリは溜息を吐いた。
お兄ちゃんじゃなくてもいいから、せめて大輔くんとか賢くんが一緒だったらよかったのになぁ、って思った。
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