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ナイン・レコード
ちいさなしまのおはなし
選ばれし子ども達
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た。
ここにはデジモンしかいないとデジモン達は言っていたのに、治の推理でここは自分達がいたところではないと半ば諦めて現実を受け入れつつあったのに、目の前に現れたのは会いたいと願っていた人間だった。
年は20代後半から30代前半の青年に見える。
焦げ茶色のセミロングの髪を無造作に結んでおり、白いローブを羽織っていた。

《初めまして。デジタルワールドにようこそ、選ばれし子ども達。私の名はゲンナイ。このデジタルワールドの安定を望む者だ》

青年は、ゲンナイと名乗った。

《君達のそばにいるデジモン達だけでは、きっとさっぱり要領を得ないだろう。なのでデジヴァイスに記録として、保存しておいた。これは君達の世界でいう録画のようなものだから、私からの一方通行になることを許してほしい》

何だ、って子ども達はちょっとがっかりする。
せっかく人間に会えたのに、質問することも出来ずただ一方的に向こうの話を聞くだけだなんて。
だが次の言葉で、子ども達はさらに驚愕することになる。

《始めに言っておくが、私は人間でもデジモンでもない》

ゲンナイは、この世界の調和と平穏を望む、セキュリティーシステムの末端だという。
この世界の1番偉い神様から指令を受けて、それを子ども達に伝える役割を担っているらしい。

《まず、この世界のことを教えよう。ここは先程も言ったが、デジタルワールドと言う名の、君達の世界とは別次元に存在する世界だ。所謂異世界という奴だ。だからここには君達のような人間は存在していない。人の姿をしたデジモンはいるがね》
「……治の仮説は正しかったってわけか……」

丈が眉を顰めながら呟いた。出来れば当たってほしくなかった仮説であったが、それでも治が早い段階でここは自分達の世界ではないと言ってくれたお陰で、だいぶ心構えは違ったので有難いと言えば有難いが。

《君達の世界にあるパソコンを介してくることが出来る、それがこの世界なんだ。君達とこの世界はとても密接に絡み合っていて、切っても切り離せない、まるで双子のような関係なんだよ。……君達の世界で、今何か異変は起きていないかい?》

にこやかだった表情が一変し、真剣なものとなった。
ゲンナイの最後の言葉に、心当たりがある子ども達の肩がピクリと一斉に動いた。
録画でしかないゲンナイの映像から目を離して、それぞれ隣にいる仲間と目配せをする。
ゲンナイの言う通り、今太一達の世界は異変だらけである。
乾燥地帯で洪水が起きたり、亜熱帯で雨が全く降らなかったり、太一達がこの世界に来る直前は季節外れの雪が降った。
だがどうしてゲンナイがそれを知っているのだろうか。
録画のゲンナイは、子ども達が戸惑っている様子など知らず、そのまま話を続ける。

《……単刀直入に言おう》


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