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ナイン・レコード
ちいさなしまのおはなし
ちびっこの交流
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お気に入りのリュックは青い色。
大好きなアニメのキャラクターの顔が貼りつけてあって、お出かけをするときはいつもこのリュックを使っていた。
その中にお菓子とパンをありったけ詰め込んで、しっかりとチャックを閉めてから背負う。
踵を踏み潰したランニングシューズを履き、お姉ちゃんに手を引かれながら大輔は玄関を出る。
扉を開け、背の小さな大輔が塀と天井で狭められた空を見上げると、オレンジ色に染められていた。
夕方を知らせる鐘はとっくに鳴り終えている。
鐘が鳴ったら帰りましょう、朝になるまで外に出てはいけませんよ。
なのにお姉ちゃんは、お母さんの目を盗んで大輔の手を引いて、外に出てしまった。
大輔の方を一切振り向かず、ただ大輔の小さな手をしっかりと握って、早足でマンションの廊下を歩く。
時々転びそうになりながらも、大輔は待ってとか早いとか、文句を一切言わずにただお姉ちゃんについていった。
エレベーターのボタンを押す。今日に限ってなかなか上がってこない。
1階ずつ止まるエレベーターに痺れを切らしたお姉ちゃんは、すぐ傍の階段を使って降りる。
カンカンカン、と金属でできた階段が甲高くて短い音を鳴らした。




空がオレンジと濃紺の半分ずつになる時間帯だというのに、お姉ちゃんは引き返そうとしない。
それどころかどんどん先へ進んでいく。
濃紺が迫る住宅街を真っ直ぐ突き進んでいくお姉ちゃんを不思議に思いながらも、大輔は黙ってその手に引かれて歩いていく。
もうお夕飯の時間だから帰らなくていいの、とか、何処に行くの、とか疑問は沢山浮かんできたけれど、お姉ちゃんはどんどんお家から離れていく。
大輔の位置からでは、お姉ちゃんの顔色を伺うことは出来ないから、今お姉ちゃんがどんな顔をしているのかは分からない。


すっかり暗くなってしまった辺り一帯は、次々と街灯が照らし始める。
それでも、人口的な灯りは道を照らすので精いっぱいで、空は相変わらず真っ黒に塗りつぶされていた。
わき目も振らずに、真っ直ぐ突き進んでいたお姉ちゃんの足が、ぴたりと止まる。
それにつられて大輔も立ち止まった。
じ、とお姉ちゃんの視線の先にあったのは、いつも遊んでいる公園だった。
公園にも街灯はあるが、1つだけしかなく、昼間に遊んでいる時と雰囲気が違って見えて、何となく不気味だ。
物心つく前から“そういったモノ”が見える大輔は、殆ど無意識にお姉ちゃんの手を強く握った。
直後に、お姉ちゃんは公園に向かって歩き出す。
ブランコ、ジャングルジム、滑り台、一般的な公園にある遊具は一通りある。
お姉ちゃんが向かったのは、半球体で幾つか穴が開いているドームだった。
昼間、皆で遊ぶときは、そこでよく秘密基地ごっこをして遊んでいる遊具である。

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