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俺様勇者と武闘家日記
第1部
アッサラーム〜イシス
砂漠での冒険
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ゃん」
 シーラが、戸惑いながらもマントを受けとり、お礼を言った。それには特に反応せず、すたすたと前を歩き始めるユウリ。
 それを見たナギが、奇妙なものを見るような顔つきで私にこっそりと耳打ちしてきた。
「なあ、あいつ最近おかしくないか?   妙に親切っていうかさ」
「そう? ユウリは前から優しいよ?」
 確かに出会ったばかりの頃や、ロマリアにいたときは何を考えてるのかわからなかったし、苦手でもあった。でも一緒に旅をしているうちにわかってきた。カンダタ退治を手伝ってくれたり、ノアニールでおじいさんの思いを聞いてあげたり、口には出さないが私たちを助けている。ただそれを表現するのが不器用なだけで、根は優しいのだ。まあ、時々何考えてるのかわからないし、怒るときはものすごく怖いけど。
 ナギが最近と感じるのは、ユウリがその気遣いを、私たちに隠さなくなったからではないだろうか。
 シーラは早速マントを身に付けると、涼しい〜♪と言ってその辺を走り回った。
「あんまり動き回らない方がいいですよ。砂漠は歩くだけでも体力使いますから」
 ルカが冷静に注意する。そして、持っていた鞄から、なにやら小さくて丸いものを取り出した。
「ルカ、それなあに?」
 私が興味深く聞くと、ルカはしたり顔で振り向いた。
「アネキも気になる? やっぱり商人の血が騒ぐだろ?」
「いや私武闘家だし」
 私がにべもなく言うと、ルカは少し寂しそうな顔をした。けれどすぐに気を取り直し、私にそれを見せつけながら説明を始めた。
「これは師匠から借りた『方位磁石』ってやつさ。手に乗せるだけで、なにもない場所でも正確な方角を調べることが出来るんだ」
「へええ。すごいものを持ってるんだね」
 ルカの手のひらを覗いてみると、小さくて平たい円形の箱の中に、横にした小さな針がゆらゆら揺れている。針の両端にはそれぞれ何かを示しているのか赤と黒で着色してあった。
 すると、ユウリも珍しいアイテムに興味があるのか、無言で私の横に立ち、一緒に覗き込む。
「ええと、ここが北で、こっちが南。……ってことは……こっちか!」
 何やらぶつぶつと呟くルカ。すると何を思ったか、いきなり明後日の方向へ走り出したではないか。
「ちょっと待ってルカ! 急に走らないで!」
 周りが見えていないのか、私の言葉に耳も貸さず、どんどん先へ走っていく。仕方なく、急いで追いかける私たち。すると、急に私の前を走っていたユウリが一歩後ずさる。
「気をつけろ!   魔物だ!!」
 瞬時に緊張感が走った。私もすぐさま足を止める。そのとき、前にいるルカと私たちの間の地面から、ピンク色の大きなムカデのようなものが現れたではないか。

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