行き倒れが当たり前にいる町だとは思わなかった
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なんで?」
『君と衛藤可奈美がなかなか聖杯戦争に参戦してくれないからね。なぜなんだい?』
「言っただろ。俺は、皆を守るために魔法使いになったんだ。叶えたい願いなんてものもない」
『そうだね。君は、戦いを止めることそのものが願いだったね』
「わざわざそれを確かめに来たのか?」
『まさか』
キュウべえはバイクのフロントに跳び乗る。ハルトはそれが気に入らず、顔をしかめるが、キュウべえには通じない。
『先日、君が戦っているファントムという怪人を目撃したよ。なるほど。恐ろしいほどの魔力の塊だね』
「……まあな」
『少し興味ある現象でね。魔力を持った人間、ゲートが深く絶望すると、その人間を突き破って出てくる。それで間違いないかい?』
「……ああ」
『本当に興味深いね。そのシステムは』
クラーケンが、ハルトの手元に降りてくる。魔力切れと理解したハルトは、クラーケンのボディから指輪を抜くと、その体が霧散した。
それを眺めているキュウべえは続ける。
『君には衛藤可奈美の願いを伝えた方がいいかもしれないね』
「?」
そんな、聖杯戦争にとって重要なファクターを勝手に伝えてもいいのか。ハルトはそう思いながら、キュウべえの言葉に注意する。
キュウべえは語った。
『彼女の願い。君は知っているかい?』
「……知らない。でも、それをお前から聞こうとは思わない」
『どうしてだい?』
ハルトは少し黙った。そして。
「可奈美ちゃんから直接聞く」
『ふうん。やはり人間は理解できないね。知りたいことを最短で知るのが、一番効率的じゃないか。全くわけがわからないよ』
「お前が分かるようになれば、俺たちとも少しは共存できるのかもな」
『それは早計だよ』
キュウべえはハルトのバイクから飛び降りた。ピンクの模様が付いた背中をこちらに向ける。
『まあいいさ。でも僕は、衛藤可奈美には間違いなく伝えたよ。この聖杯戦争に勝ち残れば、願いが叶えられるって』
「……何が言いたいのさ?」
『衛藤可奈美に、いずれ寝首を?かれるだろうと。まさか、それほど信用しあえる仲でもないと思うけど』
「……」
ハルトは黙った。改めて考えれば、ハルトは可奈美のことを何一つ知らない。剣術バカであり、大切な人を探しに見滝原に来た。それ以上のことは何も知らない。
それを知ってか知らずか、キュウべえは続ける。
『理解しているのかい? マスターはそれに、彼女だけではない。いずれ君の前に現れるマスター一人一人に対しても、彼女のように対応するつもりかい?』
「……悪いのか?」
『いや。まあいいさ。そういう立ち回りも有意義だろう。君の健闘を祈るよ』
そのまま四つ足で歩み去っていくキュウべえ。ハルトはどんどん小さくな
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