暁 〜小説投稿サイト〜
或る皇国将校の回想録
第五部〈皇国〉軍の矜持
第七十八話駿馬は龍虎の狭間を駆ける
[5/5]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
いたからである。
 この中隊も含めればその数は八十発を超えていた、そのうち六十発はさしたる効果がなかった――倉庫にマトモにあたっても有効打にはならなかったものもある、がとりあえずは混乱を煽るという意味では無駄ではない。
そして、二十数発は兵站拠点の破壊について有効な打撃を与えた。うち3発は砲兵として言えば至近に近い距離で叩き込まれた司令部への打撃であり、当座の混乱という意味ではまさに最大の効果を上げた。派手に炎上を始めた飼葉を保管していた天幕、輜重馬車置き場も炎上している、 野ざらしであった材木、油脂、野営用の天幕なども既に用途を燃料へと変えつつあった。
 それでも、一部が損傷しつつも練石で作られた二棟の武器弾薬庫だけは無事であった。
 既に運と勘の良い下士官兵共とまこと不運であった数人の将校らがそこへと逃れていた。
 

 前線兵力が三街道の前線に張り付けられた間隙を縫った奇策――否、半ば投機のようなものであった。
 この作戦は六芒郭救援を目的として”各軍の現状に適した作戦”として遂行されたものだ。しかし、敵の誘因以上のことはせず、ましてや彼らは敵軍を打ち倒したわけでもなかった。
 それでも彼らは満足していた。奇襲は大成功だ。そして兵達すらもわかっていた。冬の間の安全を彼らは幾らか勝ち取ることができたのだと。

 護州軍は春を戦うに向けて最も重要なものを勝ち取った。即ち勝利の経験である。
[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ