暁 〜小説投稿サイト〜
水の国の王は転生者
第五十七話 新大陸を目指して
[2/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
日のアニエスの仕事は、遅番のシフトだった。
 仕事と言っても、やる事は歩哨ぐらいで、退屈に感じながらも明け方には仕事が終わった。
 エレオノールら同居人達は、当然ながら寝付いていてアニエスも寝てしまっても良かったが、寝る前に風呂に入りたかった。

(今日は、船酔いもそれ程酷くないし、ゆっくり寝られそうだ)

 地獄の様な吐き気と苦しみから解放され、アニエスは上機嫌だった。

 深夜という事もあって、風呂場には誰の姿も無くアニエスの貸し切り状態だった。

「……ふう」

 湯船に肩まで浸かり一息ついたアニエス。
 この瞬間が何よりの至福の瞬間だった。
 アニエスは、両手で湯をすくって顔に浴びせると、そのまま湯船の中に潜った。これも貸切の特権だ。
 この辺のところが、まだアニエスが14歳の少女たる所以だろう。

「……ぶくぶく」

 風呂で遊んでいると、ドアが開いて何者かが入ってきた。
 しかし、潜っていたアニエスは、これに気付かなかった。

 ガチャリと、ドアを開けて入ってきたのはマクシミリアンだった!
 全裸のマクシミリアンは、未だに『眠気まなこ』の状態だった。

「うぅーい」

 マクシミリアンは、桶にお湯をすくって頭から被ると湯船に入った。その掛け声は、まるで何処かのおっさんだ。

(う、誰か入ってきた)

 潜水していたアニエスは、誰かが湯船に入ってきた事にようやく気付いた。

(おかしいな、ちゃんと看板を掛けて置いた筈なのに)

 看板とは、『女性入浴中』と書かれている看板で、この看板が掛けてある状態で、風呂場に侵入すると厳しい罰が課せられる……訳ではなく。拘束力の無い、ただの紳士協定だが……
 ……乗組員は紳士揃いなのか、今のところ罰を受けた者は居なかった。

 チャプン……と、頭の上半分を湯船から出して隣を見ると、侵入者の正体はマクシミリアンである事に気付いた。

「ぶほっ!?」

 アニエスは思わず噴き出してしまったが、頭の下半分は湯船に浸かっていたお陰で大きな音は出なかった。

「♪〜」

 幸い、マクシミリアンは、歌を歌っていて気付いていない。
 ちなみに曲名は、土曜夜八時に全員集合する番組のED曲だ。
 アニエスは、気付かれないようにマクシミリアンから遠ざかった。
 アニエスとマクシミリアンとの間には、大人一人分の微妙空間が出来た。

「むふー」

「……」

 ……どれくらい時間が経っただろう。
 マクシミリアンの独唱会に、アニエスは辟易していい加減に風呂から上がりたかったが、そんな事をしたらマクシミリアンに裸を見られてしまう。
 年頃のアニエスにとって耐えられない事だった。

 ちなみに、マクシミリアンの歌は金が取れる
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ