暁 〜小説投稿サイト〜
その日、全てが始まった
第1章:出会い
第7話 『彼等の原点』
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???心の奥底へと 染み渡っていく

 拓巳のキーボードに、洸夜・雅人のギターが合流する。
 それに続いて、ベースとドラムも重なるのだった。

 ???儚い日々 何も掴めない
 ???くる日も来る日も 虚空に手を伸ばし

 歌詞に合わせ、少しばかり寂しげな表情で祐治は歌う。
 それに合わせて、演奏も少し弱まる。

 ???深淵の空 落ちる光
 ???目にも止まらぬ 速さで

 徐々にテンポを早めて行く。
 そしてサビ前の間奏で、一同はアイコンタクトを取ると一斉に頷く。

 ???消えそうな言葉じゃ 不安でしかないよ
 ???だからもっとはっきり言ってよ 必ず掴み取ると

 キーボードを中心に構成された音に、祐治の歌声が重なる、
 そして、この曲最大の盛り上がりへと突入する。

 ???その大事な言葉 約束を果たしてよ
 ???いつまでも潰えぬ 夢を追いかけると

 ラストフレーズの後、彼等の演奏はピタリと止まる。
 そして、会場内は本日1番の歓声に包まれるのであった。

「ありがとうございました。最後に、拓巳から一言貰おうかな?」

 そう言って、MCを拓巳に渡すのだった。

「えーっと……先ず、先程言われた通り、自分はこのCrescendoを抜けることになりました。ただ、2度と戻らないのではなく、また戻ってくるつもりです」

 真っ直ぐとした視線で、拓巳は会場内の人々に自身の意思を告げる。

「それと、これからもどうかCrescendoの方を宜しくお願いします。じゃあ洸夜、キーボード任せたよ」

 拓巳にそう言われた洸夜は、「お任せを」と返すのだった。

「以上です。今日は本当にありがとうございました!」

 拍手に包まれ、この日の彼等のライブは幕を閉じるのだった。
 そして迎えた翌日。
 羽田空港に、彼等はいた。

「そろそろ行かなきゃだ」
「もうそんな時間か」

 時計を見る拓巳の言葉に、祐治が少し残念そうに返すのだった。

「そんな顔するなって。拓巳と二度と演奏ができないわけじゃないんだからさ」

 そんな祐治に、洸夜がそう言葉掛けるのだった。

「拓巳君、気をつけてね」
「向こうでも、頑張れよ」

 結弦と大樹が、そう言うのであった。

「ああ。ありがとう」

 そう言った拓巳は、不意に全員に向けてこう提案した。

「最後に、約束してもいいか?」

 一同は即座に頷いた。

「また、この6人(・・)で演奏しよう。必ず」
「あ、俺も入ってんの?」
「当たり前だろ。お前も大事なメンバーなんだから」

 そう返された洸夜は、少しばかり恥ずかしそうにするのだった。

「じゃあ、約束な」
「ああ」
「うん
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