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Episode.「あなたの心を盗みに参ります」
本編
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わかった。

「しっかりつかまっててくださいね」

 そう声がした直後、下からぶわっと風が吹き上げた。ジェットコースターに乗ったときのような浮遊感がして、私は思わず目の前にある彼のスーツをぎゅっと掴む。
 遠くで警部さんが叫ぶ声が聞こえる。風の勢いが収まったとき、私はおそるおそる目を開けた。

「わ……すごい」

 目を開けた途端に見えたのは、眼下に広がる夜景だった。マンションやビルの明かり、そして遠くにある観覧車のカラフルな光までもが、目の前いっぱいに広がっている。
 見慣れた街並みなのに、知らないところを見ているようだった。今までのどんな高いビルから見た景色も、今日のこの景色には勝てないかもしれない。

「気に入っていただけましたか?」
「うん……すごく、気に入った」

 景色を見ながら感嘆のため息を吐く私を見て、彼は満足そうに微笑んだ。
 きっと、この景色は人生で一度きりだ。写真かムービーを撮りたい気持ちでいっぱいだったけど、レンズを通して見るのももったいなく感じて、そのまま景色を見つめ続けた。

 心地いい風に吹かれながら、私たちは少しずつ地面に近づいていく。名残惜しく感じながら、私は最後まで周りの景色を見回していた。

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