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Episode.「あなたの心を盗みに参ります」
本編
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していたであろう警官たちが、重なり合って眠っている。彼がやったんだろうか。なかなか異様な光景だった。

 そういえば、今日は何をするつもりなんだろう。予告状には、盗んだものを返すとしか書かれていなかったはずだ。私を連れてくる意味はあるのだろうか。

「お嬢さん、高いところは苦手ですか?」
「う、ううん。大丈夫」

 屋上を歩きながらそう尋ねた彼に、私は咄嗟に首を振った。走っていたときより余裕があるのか、彼は私の顔を覗きこんできた。抱えられたままの状態で目が合うと、かなり距離が近い。なんだか恥ずかしくて、顔が熱くなった。そろそろ降ろしてくれないだろうか。

 そう思ったとき、先程入ってきた扉が突然大きな音を立てて開け放たれた。驚いて扉の方を見ると、警部さんがぜえはあと肩で息をしながら入ってくるのが見える。

「キッドおおお! そこまでだ! 大人しくしろ!」

 以前とは違い、なんだか少し焦っているような気がする。私という人質がいるからかもしれない。
 一週間前のあの日から少し調べていた私は、怪盗キッドが人を攫ったことがないのを知っていた。……ちょっと、攫われたいと思っていたからである。

「そろそろ来るだろうと思ってましたよ、中森警部」
「お前、何をする気だ?」

 警部さんがそう叫ぶと、彼はニヤリと口角を上げた。

「予告状にも書いたはずですよ。盗んだものを返すと」

 意味がわからないという表情をした警部さんを無視して、彼はそのまま屋上の端まで歩いていく。私も彼の意図がわからないまま、状況を見守ることしかできなかった。

 今日は、一般のお客さんにバレないようにしていることもあり、一週間前よりは警備が手薄だ。ほとんど障害もないのだろう。あくまでゆっくり歩いている。ここまでこれば、あとは飛んで逃げるだけなのだ。

 あれ……飛んで逃げる……?

 そう思ったときには、もう彼は屋上の端の方に立っていた。先程高いところは苦手かと聞かれたのは、このためだったのだろう。今にも飛び降りそうな彼に、私は慌てて声をかける。

「ま、待って待って! ちょっと待って!」

 飛べるというのはわかっているけど、さすがにこの状態で飛ぶのは怖すぎる。下手したら落ちるかもしれないし、私が重くてうまく安定しないかもしれないし……!

「大丈夫ですよ。落としたりしませんから」
「いやいやさすがにダメ! ムリムリっ、絶対無理……っ!」

 止めようと焦って騒ぎ出す私を見ても、彼は楽しそうに笑うだけだった。どうやら、何を言ってもやめてくれる気はないらしい。

 そのとき、警部さんが走ってこちらに向かってくるのが見えた。こうなると、もう飛ぶしか道がない。覚悟を決めて目を閉じると、彼の私を抱える手に少し力が入ったのが
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