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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
緋神の巫女と銀氷の魔女《デュランダル》 T
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怖心を抱き、歩調を止めてしまったことを。

いつもは如月彩斗もいる。そのパートナーのアリアもいる。幼馴染の白雪もいる。武偵校の友人もいる。
その彼等彼女等も ──今は全員、居ない。
進んではいけない境界線の淵で逡巡していた。死の淵を覗き込んだかのような悪寒と、突き放されていく恐怖。

酷く長たらしい時間に感じた。恐らく、たった数秒だったのだろう。しかし現に今、この数秒が命取りになってしまっている。
白雪の姿を見失い、真の意味での孤独を体感しているのだ。誰が何処に居るとも分からない、ある種の闇の中枢だ。


「……それでも、か」


キンジはおもむろに呟くと、傍らにある変圧室に侵入した。更にその片隅、床に設置されている非常入口から保護ピンを抜く。
マンホールのような形状をしているこれは、浸水時の隔壁も兼ねているらしい。三重の金属板で構成された保護壁を破るのは、ある意味一苦労でもあった。


それでも──。


パスワード認証、カードキー、非接触IC、それらを駆使して幾つもの扉を開け、階下へと梯子を下ろしていく。
降り立ったボイラー室でも同様に、地下3階、4階、5階。
焦燥に駆られた生身の人間の皮膚は、擦り減っていた。


それでも──。


痛覚などは、かなぐり捨てる。
白雪がここに居る可能性も、《魔剣》が居る可能性も、高い。
ましてや幼馴染なら。1度でもあの感情を抱いてしまったのなら、起こるであろうそれを見殺しにすることは、出来やしない。


「……よし」


呟き、ようやく降り立った先は、地下7階。別名を地下倉庫(ジャンクション)。武偵校の最深部であり、強襲科・教務科と並んで最も危険とされている場所でもある。
間違いない。彼女はここに居るのだ。直感がそう告げている。

赤く灯っている非常灯は、どこか物寂しさを助長させた。
それらが照らすのは、左右に陳列されている弾薬棚。その先は大広間のような空間になっていることを思い出してから、キンジは眉を(ひそ)めた。

……地下倉庫の中でも危険な弾薬が集約されている、大倉庫と呼ばれる場所がこの先にある。大口径の銃弾は勿論のこと、投擲弾、対戦車擲弾。強襲科の知識が無い者ですら戦慄を覚えるような、そんな場所なのだ。3大危険区域。その理由はそこにある。

つまるところ、銃は使えない。ここは地下倉庫であり火薬庫だ。
跳弾が当たりでもして爆発が幾重にも誘発されたとしたら……、比喩表現では飽き足らない。武偵校が、学園島が、吹き飛ぶ。

見たところ、丁重に管理されている様子は微塵もない。だからこそ危険性が増すのであって、それが起きないという保証をすることは、キンジには到底不可能だった。

小さく溜息を吐き、
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