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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
緋神の巫女と銀氷の魔女《デュランダル》 T
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それにしても、こんな早い時間に抜け出すのか──。
胸の内でそう呟きながら、キンジは足早に白雪の後を追っていく。抜き足(スニーキング)で階段を降り、一定の距離を保ちながら、朝風に靡く彼女の黒髪を見つめていた。

駐車場を抜け、路地に出る。そのまま白雪はペースを落とすことなく、歩を進めていった。キンジも同様に尾行する。
まるで目的地が明確に決まっているかのようだ。行き先は分からないが、《魔剣》と予め決めていたのだろう、と類推した。

もう朝陽は昇りかけている。日の出の前に起こされた行動は、言ってしまえば《魔剣》の傀儡そのものだ。白雪がそれに抗えないということは、何かしらの枷が課されていると見ていいだろう。
先程の仮定に基づけば──他言をしなければ、白雪の身辺に危害を与えない、だろうか。彼女の性格を読み解けば納得できる。

そんな推理をしながら、依然としてキンジは、白雪の後ろ姿を追っていく。時には物陰に隠れながら、動向をうかがっていた。
彼女は片時も脇見をしていない。何か言い知れぬ焦りの感情に駆られているかのような、そんなモノを気配から感じた。

そうして、歩き始めてから数十分。
ようやくキンジは、白雪の行き先を当てを付けることが可能になった──東京武偵校。その、地下であることを。







武偵校の地下は船のデッキのような多層構造になっており、地下2階からが水面下に位置する。その主たる移動はエレベーターなのだが──何かがおかしいとキンジはこれで確信した。


「……チッ」


電子盤に数桁の数字を入力し、金属製の扉に手を掛けた。だが、それは微塵も動く気配を見せず、鎮座して異変を告げている。
意図しない舌打ちが鼓膜を揺るがせ、胸中にあるキンジの焦燥感を更に苛んでいった。あそこで逡巡(・・)さえしなければ──。

更に下の立入禁止区画に侵入するためには、このエレベーターが必要不可欠だ。緊急用のパスワードを打ち込むことで、それは正常に動作をする。パスワードさえ知っていれば、だが。
それなのに微塵も動く気配さえないということは、何者かによって工作を受けたと考えるのが妥当だろう。


──《魔剣》は、居る。この近くに。


恐らくは白雪がこのエレベーターを使用した直後に、システムが遮断されたのだろう。つまるところ、外部の介入を必要最大限に避けたということだ。嫌がった、とも言える。
早朝という時の利を利用し、地下という地の利も得られた。これほど都合の良い状況というのは、なかなかに存在しない。

……いや、造りだすように仕向けられたのだ。

眼前にある金属扉を睨みながら、キンジは数分前の行動を思い返していた。ここ武偵校の地下へと移動する路の途中で、ほんの一瞬だけ恐
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