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ふんわりのんびり
第四章

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「近寄ってちょっかいかけないといいから」
「何もしてこないですか」
「ヤマカガシも」
「ヤマカガシ?」
「この蛇も毒蛇」
「そうだったんですね」
「けれどちょっかいかけないと」
 そうでもしないと、というのだ。
「安心していいから」
「そうなんですね」
「それで鼠を食べてくれるから」
 兎はまたこのことを話した。
「いい生きもの」
「怖くてもですか」
「むしろ猿とかの方が駄目」
「お猿さんは?」
「あいつ等農作物食べるから」
 それでというのだ。
「この辺りの山は豊かで食べもの多くて他の獣は里に下りてきてもそんなに農作物荒らさないけれど」
「お猿さんはですか」
「あいつ等何でも食う」
「それで、ですか」
「渋柿も食べる」
「あれっ、童話では」
 美幸は猿蟹合戦の童話から兎に尋ねた。
「確か」
「童話は童話で」
「実はですか」
「猿は渋柿も食べる」
「そうなんですね」
「勿論熟れた柿も」
 こちらもというのだ。
「柿なら何でも食う」
「そうなんですね」
「私柿大好きだから」
 それでというのだ。
「余計に腹が立つ」
「柿を食べられるので」
「そう、あいつ等が一番厄介」
「他の獣よりもですか」
「あいつ等は厄介」
 兎は美幸にこんなことも話した、そうした話をしつつ共に村で暮らしていった。二人はやがて村から離れた高校に進学したが。
 電車に乗る時も兎は自分より一年遅れて自分と同じ高校に入学した美幸に共に座りながらこんなことを言った。
「ここは電車も少ない」
「ですよね」
「田舎だから」
 理由はこれに尽きた。
「始点だけれど」
「それでもですね」
「ここに着く電車は少ない、だから」
 それでと言うのだった。
「乗り過ごさない」
「乗り過ごしたらですね」
「確実に遅刻」
 そうなってしまうというのだ。
「だから注意」
「そこは気を付けないといけないですね」
「けれど」
 兎はこうも話した。
「帰りは寝過ごすことはない」
「終点だからですね」
「それは」
「それならですね」
「もう絶対に」
 何があってもというのだ。
「寝過ごして乗り過ごすことはない」
「そこはいいことですね」
「悪いことあればいいことがある、そして」
「そして?」
「トータルで考えたら」
 そうすればというのだ。
「いいところ」
「そうなりますか」
「だって寝過ごさないから」
 このことがあるからだというのだ。
「だから」
「いいことですか」
「要は遅れなかったらいいから」
 行きに電車に乗る時間にというのだ。
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