第三章
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「あの、この村何か」
「どうしたの?」
「夜に何か出ないですか?」
「お化けとか?」
「はい、世道歩いていたら」
その時にというのだ。
「上に何か飛んで。鳥でも虫でもない」
「そうしたのがなの」
「電線の灯りに見えたんですが」
「街灯に」
「あれ何でしょうか」
「鳥でも虫でもないお空を飛ぶもの」
兎はそう聞いて無表情で考えた、そのうえで美幸に答えた。
「それ多分蝙蝠」
「蝙蝠ですか」
「ここは蝙蝠もいるから」
「それで、ですか」
「夜になったら出て来る」
「村の方にもですか」
「そう。けれど安心して」
兎は美幸に無表情のまま答えた。
「何もしてこないから」
「蝙蝠は、ですか」
「それどころか蚊とか食べてくれるから」
それでというのだ。
「有り難いから」
「蚊を食べてくれるからですか」
「凄く有り難い生きものだから」
「有り難く思えばいいですか」
「そう。血とかは吸わないから」
これはないというのだ。
「ブラジルとかみたいに」
「チスイコウモリですね」
「あと吸血鬼が変身してもいないから」
「日本はドラキュラ伯爵いないですからね」
「あの人はルーマニア人だから」
作中の伯爵もモデルになったヴラド四世もだ、二人共ルーマニア人でありこの国の代名詞にさえなっている。
「だから」
「日本にはですね」
「いないし、それに蝙蝠も」
「血を吸わないですね」
「だから全然怖くないから」
「そうなんですね」
「むしろ蚊を食べてくれて」
それでというのだ。
「有り難いから」
「感謝すべきですね」
「そう、蚊がいないと」
それならというのだ。
「その分楽だから」
「ここ蚊多いですね」
「蚊は田舎は多いから」
どうしてもとだ、兎は美幸に話した。
「食べてくれる生きものは有り難い」
「蝙蝠もですね」
「あと蜻蛉も」
「蜻蛉もですか」
「いつも飛んでるけれど」
美幸もよく見ている、とにかく蜻蛉は多い。
「あれは蚊を食べてくれているから」
「飛びながらですか」
「そう、ヤゴの時はボウフラを食べてくれるし」
兎は蜻蛉の幼虫の話もした。
「そのことも」
「いいんですね」
「蜻蛉も」
「蜻蛉って東京じゃあまり見なかったですが」
「ここではそうだから」
「怖がらなくていいですね」
「むしろ感謝する」
そうすべきだというのだ。
「蝙蝠も蜻蛉も」
「わかりました」
「あと蝮も鼠を食べてくれる」
兎は今度は毒蛇の話もした。
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