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遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン18 もうひとりのエンターテイナー
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かし明らかに聞こえていたであろう失言にもめげず、エセアメリカ人はテンションを崩さない。ぐるりと店内を見渡していまだテーブルに突っ伏したままの赤髪に目を止め、その表情をさらに輝かせてつかつかと歩み寄る。面倒くさそうに軽く頭を上げた彼女の目の前に、勢いよくその右手が差し出された。

「お初にお目にかかりマース、セニョール糸巻太夫。まずは友好の証、シェイクハンドしましょう!」
「あぁー……?人違い、ってわけじゃなさそうだな。握手は結構だが、まず誰だアンタ」
「ノー、これは失礼いたしました。ある時は胡散臭いエセアメリカ人、またある時は胡散臭いエセ中国人、またまたまたある時は胡散臭いエセフランス人……」

 自己紹介ひとつに挟まる長々しい前口上に、後ろでそれを聞かされる清明と八卦が密かに胡散臭いのは自覚あったんだこの人、と意識をひとつにアイコンタクトをとる。しかし次の瞬間、男の気配ががらりと変わった。胡散臭い日本語風英語は鳴りを潜め、気取った調子で深々と一礼する。そしてそのポーズに、糸巻は見覚えがあった。

「……しかしそのその正体は?劇団「デュエンギルド」元・団員、一本松一段(いっぽんまついちだん)。ユー相手には鳥居浄瑠の兄弟子、って言った方が通りがいいかな?改めてお初にお目にかかる、こんな美人さんの下で働けてあいつも幸せもんだ」

 鳥居の兄弟子。さすがの糸巻もこの言葉には不意を突かれ、目を丸くして押し黙る。そしてそれは、清明と八卦も同じこと。同時に、目の前の男から漂う胡散臭さの正体も判別がついた。要するに今彼女たちが見ている姿は、デュエル中の鳥居と同じく演劇モードに入った姿なのだ。ただひとり事情がよく呑み込めていない鼓が探るように全員の顔を見渡し、しかし口を挟むことはせず興味深そうにカップを口に運んだ。

「ん?ああ、別にそう構えないでくれ。あいつに何があったのかはミーも知っている、それについて上司のユーに文句を言いに来たわけじゃない。デュエルポリスってのはそういうリスクもある仕事なんだろうし、あいつはそれをわかったうえでこの職に就いた、そうだろう?それなのにミーがその結果に文句をつけるのは、あいつの覚悟に対して最も失礼な行為だ。まあ、後で見舞いには行くつもりだがな。今回ミーが弟分より先にユーのところに顔を見せに来たのには、また別の理由がある」
「つまり?」

 予想だにしない方面からやってきた来客の衝撃から立ち直り、鋭い目つきで先を促す糸巻。先ほどまでのだらけた様子とはまるで違う抜身の刀のような威圧感にわざとらしく身震いしてみせ、一本松が敵意のないことを示すかのようにこれ見よがしに両手を広げた。

「どうどう。そんなに怖い顔で睨むと美人が台無しだぜ、マドモアゼル?ミーはただ、純粋に挨拶だけしにきたのよ。デュエルフェスティバル
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