ターン18 もうひとりのエンターテイナー
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はずの自然公園。なぜかその道の真ん中に立ちすくむ人影に、上機嫌なまま気さくに話しかける。しかし、その人影は答えない。返事の代わりにおもむろに、その左腕に付けられた機械……デュエルディスクを起動した。
「おいおい、穏やかじゃないじゃないか。勘弁してくれよ」
こんな夜更けにデュエルの勧誘。14年前ならいざ知らず、このご時世にそんなことをするのは「BV」を利用しての通り魔ぐらいのものである。さりげなく徐々に後ずさりながら逃げる隙を伺う一本松の背中に、突然固いものが当たった。
「え?」
咄嗟に振り返るとそこにあったのは、天まで届かんばかりの分厚い石の壁。いや、それは背後だけではない。気が付けば横にも正面にも張り巡らされた壁によって、彼の退路は完全に立たれていた。そして彼の記憶は、かつても見たことがあるその壁の正体をはじき出す。
「迷宮壁−ラビリンス・ウォール−……!」
見覚えのあるその壁は、守備力3000を誇る壁モンスターそのもの。実体化したものを見るのは彼も初めてだが、それでも幾度かこのカードを使うデュエリストとは戦ったことがある。
逃げ出すことは不可能。そう悟り、諦めて自らもデュエルディスクを起動する一本松。しかし、普段の彼ならばここまであっさりとデュエルを受け入れはしなかっただろう。勝利の高揚、デュエルの楽しみ。本来ならばプラスであるはずのそんな感情の残滓が、皮肉にも無自覚のうちに的確な判断を狂わせる。
と、ここに来てようやく、沈黙を保っていた人影が口を開いた。といっても、その顔が見えたわけではない。影になって何も見えない人影から、押し殺した声が届く。
「……一本松一段。覚悟」
「ミーの名前を……!?ユー、ただの通り魔じゃないな!」
答えはない。高揚の残滓すら完全に吹き飛ぶほどの嫌な予感を感じながらも、すでにデュエルは始まってしまっている。
そして。
「ノ……ノーッ!!」
それは、ほんのわずかな時間だった。絶叫が夜の静寂を裂くも、その声を聞きつけたものはいなかった。
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