暁 〜小説投稿サイト〜
戦姫絶唱シンフォギア〜響き交わる伴装者〜
第5楽章〜交わる想い、繋がるとき〜
第48節「君色に染まる空の下で……」
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いえ、僕は何も」

 そう言って緒川は振り返り、会釈すると階段を駆け下りて行った。
 未来はその様子を見て、翼にそれとなく囁く。

「翼さん……。もしかして緒川さん、翼さんのこと……」
「なっ!?ないないない!あの緒川さんに限って、そんな事あるわけが!……あるわけが、ない……はず……だが……」

 後半になるにつれて、どんどん小さくなっていく翼の声。

 それを見て、未来は確信した。

(あ、もしかして、翼さんの方が緒川さんの事を……)

 両思いになった親友と、絶賛片想い中……というより、まだそれを認めていない先輩。
 周囲の恋愛事情に、未来は少しだけ羨ましさを感じるのだった。

 やがて、日が沈む頃。緒川が運転する車の前で、翼は緒川から受け取った3枚のチケットを、それぞれに配る。

「……いい一日だった。立花と小日向にはお礼をしないといけないな。こんなものでお礼になるかは分からないが──」
「え……これって……。復帰ステージのチケット!?」
「ああ。アーティストフェスが10日後に開催されるのだが、そこに急遽ねじ込んでもらったんだ。倒れて中止になったライブの代わり、という訳だな」
「なるほど……」
「翼さん、ここって……」

 チケットの裏側を見て、その会場を確認した響が呟く。

 それは2年前のあの日、惨劇の現場となったライブ会場。
 響の運命を狂わせた場所であり、奏が命を散らした場所。そして、2年前に未来と翔が行けなかった会場でもある。

「……立花にとっても、辛い思い出のある会場だな……」

 しかし、響の言葉は予想に反するものだった。

「ありがとうございます、翼さん!」
「響……?」
「いくら辛くても、過去は絶対に乗り越えていけます。そうですよね、翼さんッ!」
「……そうありたいと、私も思っている」

 力強く、決意するようにそう返す翼の顔には、強い決意が浮かんでいた。

「今度は俺と小日向も一緒だ。何があっても、怪我と迷子からは守ってみせるからな?」
「響、その日は絶対に遅れちゃダメだよ?」
「もー、分かってるってば〜!」
「ふふ……」

 そう言って笑い合う4人を夕陽に代わり、今度は一番星と、見え始めた丸い月が照らしていた。
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