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おぢばにおかえり
第五十五話 おぢばのバレンタインその十九

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「誰かと一緒か人気のある場所で」
「会ったりお話すべきなのね」
「そうですよ、気をつけて下さいね」
「わかったわ、けれど」
 私が思うにです。
「阿波野君はね」
「何もしないですか」
「だって寮まで送ってくれたし」
 このことは忘れられないです、何か騎士に護られるお姫様みたいな感じでした。こう言うと夢見るみたいですが。
「だからね」
「それで、ですか」
「何かするなんてね」
「いえ、それが急にじゃないですか」
「変わるっていうのね」
「そうですよ、夏目漱石のこころでも書いてありましたよ」
 あの有名な作品だというのです。
「急に変わるって」
「人はなの」
「はい、ですから」
 それでというのです。
「気をつけないといけないですよ」
「そうなのね」
「ですから」
 それでというのです。
「気をつけてね」
「それじゃあ」
「そう、くれぐれもね」
 こう言うのでした。そしてです。
 私は寮に戻りました、それでお部屋の後輩の娘達にドーナツを出して一緒に食べようと言いますと一年の娘が笑って言ってきました。
「阿波野君もやりますね」
「あの子が?」
「はい、ここまで凄いお返しするなんて」
「正直驚いたわ」
「ドーナツまで、って思ってですか」
「ええ、マシュマロとキャンディーだけかって思ったら」
 それがです。
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