暁 〜小説投稿サイト〜
戦姫絶唱シンフォギア〜響き交わる伴装者〜
第4楽章〜小波の王子と雪の音の歌姫〜
第34節「衝突する好意」
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とか人に誇れるものなんてないから、せめて、自分に出来ることで皆の役に立ててればいいな〜って。えへへ、へへ……」
 そう言って窓の外の青空を見上げながら笑う響を、翼は見つめる。
 競い合わなくても……誇れるものがない……そして、皆の役に立つ……。
 これらの言葉に、翼は底知れぬ闇を感じずにはいられなかった。
 以前、翼は翔に響との出会いについて尋ねた事がある。その時聞いた話は、あまりにも凄惨なもので……13歳の少女の心を壊すには、充分過ぎるほどのものだった。
 それを踏まえた上で聞いたこの言葉に、翼は翔を重ねる。
 やはり、この2人はよく似ている。翼はそう確信していた。
「……でも、きっかけは、やっぱりあの事件かもしれません」
 響が遠い目で語り始め、翼も夢の中でさえ見たあの日を思い返す。
「わたしを救う為に奏さんが命を燃やした、2年前のライブ。奏さんだけじゃありません。あの日、沢山の人が亡くなりました。でも、わたしは生き残って、今日も笑ってご飯を食べたりしています。だからせめて、誰かの役に立ちたいんです。明日もまた笑ったり、ご飯を食べたりしたいから」
 穏やかな顔でそう語る立花に、翼は再び考える。
 やはり、彼女は少しだけ、自己評価が低いのかもしれない。周囲からの激しい迫害が、彼女の心に深い傷を作っている。
 そして、それが意味するところは即ち……。
 
「あなたらしい、ポジティブな理由ね。だけど、その思いは前向きな自殺衝動なのかもしれない」
「自殺衝動?」
「誰かのために自分を犠牲にする事で、古傷から救われたいという、自己断罪の表れ……なのかも」
 そう。私や翔と同じだ。自分を犠牲にする事で、あの日の後悔から救われたい……それらと同じ思いが、この子の中にも存在している。
 立花響もまた、私達と同じ十字架を背負っているのだ。
「あのぅ……わたし、変な事言っちゃいましたか?」
「え?……ううん。あなたと私、それに翔はよく似ていると思っただけよ」
「わ、わたしと翔くんと翼さんが……?」
「ええ。経験者だもの、分かるわよ」
 自嘲気味に苦笑しつつ、私は続ける。
「でも、そんなあなただからこそ、尚更似合う娘は他に居ないわね」
「へ?」
「好きなんでしょ、翔の事」
「ふぇぇぇぇ!?ななっ、そっ、それは……その……」
 包み隠しもせずにそう言うと、立花は途端に真っ赤になって慌て始めた。
 可愛らしい……そのまま抱き締めて、撫でくり回してしまいたいくらいだ。
「事ある毎に翔と睦み合っているらしいじゃないか。……乳繰り合う、とまでは行っていないんだな?」
「乳繰りッ……!?って、どど、何処からの情報なんですかそれ!?」
「無論、緒川さんと櫻井女史だ。特に昨日のデュランダル輸送の際は、2人で抱き合って眠っていたと
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