第3楽章〜不滅の聖剣・デュランダル〜
第28節「作戦名『天下の往来独り占め作戦』」
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事を知ったのだ。
「……優しいんですね、緒川さんは」
「怖がりなだけです。本当に優しい人は、他にいますよ」
そう言って緒川は、翔の方を見る。
連られて響も翔の方を見ると、彼は照れ臭そうに指で頬を掻きながら、そっぽを向いていた。
「翔くんも、いつもありがとう」
「お、俺は男として当然の事をしているだけで……」
「でもわたし、翔くんには助けられっぱなしだもん。感謝の気持ちくらいは伝えさせてよ」
そう言って響は、翔の右手に自分の手を重ねた。
翔はより一層照れ臭そうに、頬を赤く染めていた。
「……翼さんも、響さんくらい素直になってくれたらなぁ」
「へ?」
「緒川さん、それはどの立場からの言葉です?」
その言葉の意図に気付かない響と、少し含みを持たせた言い方で問いかける翔。
緒川はその微笑みを崩さずに、席を立ちながら答えた。
「いえ、特に深い意味はありませんよ」
「そうですか。あなたも食えない方ですね」
「そう言う翔くんこそ、そろそろ気付いたらどうなんです?」
「気付く……とは?」
翔の言葉に、緒川は可笑しそうに笑った。
「いえ、何でも。そのうち君にも分かりますよ」
そう言って緒川は、廊下の向こうへと歩き去っていった。
「翔くん、今のどういう意味?」
「さあ?」
2人で顔を見合わせて、首を傾げる。
グゥゥゥゥ〜……
その瞬間、2人の腹の虫が音を立てた。
「あはは、そういや夕飯まだだった……」
「腹の虫が嘶く頃か……。実はここに、親友の純が作った夕飯を詰めたタッパーがある」
「おお!?なになに?今夜の翔くんとこの晩ごはん、何だったの?」
「純特性、包み焼きハンバーグだ!立花の分も用意してもらったから、遠慮せずに食べるといい」
そう言って翔は、布袋の中から2人分のタッパーを取り出した。
おにぎりはそれぞれ4個ずつ。タッパーの中にはハンバーグを包んだアルミホイルが、別のタッパーには付け合わせがそれぞれ入っている。
2人はそれぞれ箸を取ると、両手を合わせた。
「「いただきます!」」
アルミホイルを開くと、デミグラスソースの香りが湯気とともに溢れ出す。
アルミホイルの中には手のひら大のハンバーグ。付け合せのインゲンソテー、ニンジン、粉吹き芋をソースに浸して一口。
それから、ハンバーグを箸で切り分ければ、中からは肉汁と共に黄色いチーズが溢れ出す。
口の中で咀嚼する度に崩れる挽き肉の感触と、下を撫でるチーズのトロトロ感。そしてそれらを包み込みながら口内へ広がる濃厚なソース。
そこへおにぎりを一齧り。米の食感と僅かな甘みが合わさり、口の中で肉と米のワルツが繰り広げられる。
気づいた頃には2人とも、あっという間におにぎりとハンバーグを食べ終えていた。
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