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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
恋篝T
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ける名前は、いったい何だろうと自問自答する。

いつからか意識し始めた、幼馴染の存在。それを想えば、言い知れぬ感情の暴力に心臓を穿たれるような、そんな感覚。傍に居て、少なからず安堵の息を吐ける。そんな感覚。
過去の如月彩斗の言を借りれば、これが『好き』という感情なのだろうか、と何度も何度も長考した。

それに踏ん切りがつかないまま、それでも、安堵の息を吐き続けていたいという面倒な欲望を満たすために──こうして先述の理由を免罪符にして、訳の分からない戯言を行動に起こそうとしている。

嗚呼、そうだ。結局はそうでありたいのだ。ただ、露呈して拒絶されるのが怖いだけ──。


「……馬鹿馬鹿しい」


誰にともなく、歩を止めることなく、ただ虚空に霧散させることが目的かのように、キンジは零した。
白雪は彼を一瞥するが、また視線を前に向けて、何事も無かったかのように歩を進めていく。

キンジは胸中で渦巻く感情を押し留めながら、せめて上辺だけの目的は果たしてやろう──と意気込んだ。
視界の端には、首都高湾岸線。東京湾を隔てた向こうには、煌びやかな装飾のウォルトランドが見えた。

立ち止まって、白雪が指さす。


「あっ、ほら、キンちゃん。あそこ! ウォルトランドだっ」
「あぁ。思った以上に人も少ないし、ここは穴場だな」
「そうだねっ。それにしても……花火はこれから、なのかな?」
「さぁ、どうだか。音は聞こえてなかったけどな」


下手したら……もう、終わってたりするんじゃないか。
なんて、キンジは一考する。ともすれば、かなりバツが悪い。
自分から誘っておいて、少なからず期待させてしまったその思いを反故にしてしまうのは、男として最低だ──。

白雪は藍のキャンパスを見上げ、揺蕩(たゆた)う千切れ雲を緩慢と目で追いながら、淋しそうに呟いた。


「……終わっちゃった、のかな。多分、私の足が遅かったり、駅で切符を買うのに手間取っちゃったからいけなかったんだよ」
「少なくともお前のせいではないから、安心しろ。もしかしたら、休憩時間かもしれないしな」
「……うん。ありがとう」


自虐史観的な性格は、昔から変わってないな──とキンジは思った。他人の非さえも自分の非にしてしまうのは、時に良くも悪くも、自分に働きかける。相変わらず悪い癖だな、と苦笑した。


「ところで、キンちゃん。昔の──星伽を抜け出して、初めて花火を見に行った時のこと、覚えてる?」
「あぁ……あれか。忘れるワケないだろ」
「あは、良かった。今回も、それと同じだね。キンちゃんが私を、学園島から出してくれた。籠から、ね」


過ぎた日々を懐古するように。今この瞬間も、1秒後にはもう過去だ。その刹那でさえも、
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