暁 〜小説投稿サイト〜
渦巻く滄海 紅き空 【下】
二十五 野心
[2/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ギリ歯ぎしりする。


貧しかった幼少の折に大蛇丸に才能を見出され、それ以来、大蛇丸に選ばれた事を生きる拠り所にしていたザク。
忠誠を誓った相手のお気に入りであるサスケを、ザクは強い眼光で睨みつける。

うちはサスケの里抜けに加担した身だが、かつて彼に右腕を折られかけた経験を持つザクは、サスケによく喧嘩を売っていた。
自分のほうが先に音忍として大蛇丸に忠誠を誓ったにもかかわらず、大蛇丸に優遇されているサスケが気に入らなかった。


「だいたいてめぇのことは中忍試験の時から気に食わなかったんだ」

木ノ葉崩しの前段階として、大蛇丸からサスケ殺害の命を受け、木ノ葉の中忍試験へと送り込まれたザク。
サスケの実力を見る為だけの捨て駒が本来の役割だったにもかかわらず、今も変わらずザクは大蛇丸の忠実な僕だ。

ザクの言葉を耳にして、サスケの脳裏に中忍試験を受験した当時の出来事が蘇る。
ザクがドスやキンと共に『音の三人衆』としてサスケの前に現れたあの頃を思い出して、サスケはつい、と片眉を吊り上げた。ほとんど独り言のように呟く。


「『音の三人衆』…だったか」

サスケのその一言に、ザクの肩が大きく跳ねた。小声であったにもかかわらず、大きな反応と動揺を示したザクを、サスケは冷ややかな眼で眺めた。


「今は、ひとり、だな」
「黙れ…!!」

挑発の色も慰めの色も、感情の色さえないサスケの一言に、ザクは激情する。
サスケとしてはただの事実を述べただけだったが、ザクにとっては地雷を踏んだも同然だった。


音忍三人衆――キン・ツチ、ドス・キヌタ、ザク・アブミ。

その名前はツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨という三つの骨から成り立つ耳小骨を思わせる。鼓膜の振動を蝸牛の入り口に伝える役割を持つそれらは、切っても切れない相互関係にある。可動連結している三つの骨だが、隣接しているツチ骨とキヌタ骨が靭帯で頭骨に固定されているのに対し、アブミ骨は前庭窓または卵円窓という蝸牛の入り口に繋がっているのだ。

名前の関連性も、繋がりも絆も、三人衆の間にはあの頃、確かに存在していた。

大蛇丸の部下として目的が同じだったとは言え、スリ―マンセルを組んで、中忍試験に挑んだ彼らの間には、言葉なくとも何かしらの信頼は築けていたはずだった。


────うずまきナルトさえいなければ。




あの時。
大蛇丸の命令でうちはサスケがいる木ノ葉の七班を襲ったものの、そのサスケに腕を折られ掛けた。
予選試合でも対戦相手であった油女シノの奇壊蟲の前に破れ去り、おまけに右腕を失った。

二度失敗した者を大蛇丸が許すとはとても思えない絶望的状況の中、ヤツは現れた。

自分と共に来るか、大蛇丸の許に戻るか、逃げるか。選択肢
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ