暁 〜小説投稿サイト〜
渦巻く滄海 紅き空 【下】
二十五 野心
[1/6]

しおりが登録されていません
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
人の感覚を麻痺させるほどの激しい水音がとめどなく続く。

轟々と唸る滝音と、水の匂い。
聴覚と嗅覚を制する滝壺には、ひとつの影が自然と一体化するかの如く、ひそやかに佇んでいた。

派手に飛沫を飛び散らせる瀑布。
滝に打たれていたサスケは、前方から忍び寄る気配にうっすら眼を開ける。

「何の用だ」

煌めく陽射しの下で、白く泡立つ滝壺。
目の前を絹糸の如く流れる水の合間を、サスケは見据える。

深く青い水面の上で自分をじっと睨みつけている相手───ザク。

充満する水の匂いに、ふと、異臭が雑ざる。別の匂いが鼻について、サスケは眉を顰めた。


「そういうてめぇは滝修行でもしてんのかよ」

吐き捨てるような物言いをする相手から香る血臭。
形の良い眉を一瞬顰めるもすぐに涼しげな顔でサスケは声をかけてきた相手を見やる。
滴る水越しにサスケを睨んだザクは、怒気と血臭を纏わせながら、挑発めいた言葉を続けた。


「サスケ、お前…大蛇丸様のお気に入りだからって調子に乗るなよ」
「…何の話だ」
「しらばっくれんな!」

ザクの怒声を意に介さず、サスケは身を乗り出す。
滝から抜け出て、滴る水もそのままに、滝壺の傍に生えている大木の枝へ手を伸ばした。そこに掛けておいた羽織の袖に腕を通す。


「大蛇丸様から命じられたのは、殲滅せよ、とのことだったよなァ!?」
「そうだな」
「じゃあなんで、テメエが相手した奴ら全員、死んでねぇんだ!?」


大蛇丸は音隠れの里の創設者であると共に、抜け忍である。その上、かつては『伝説の三忍』と謳われているのであれば、彼を倒して名をあげようと考える者は少なくない。
追い忍や賞金稼ぎやらの多くが大蛇丸の命を狙ってくるのは一度や二度ではない。よって、頻繁に襲撃してくる連中を返り討ちにするようにと、サスケとザクはよく大蛇丸に命じられるのだ。


「それなのに、てめぇは毎回殺さねぇ。甘っちょろいのも大概にしやがれ」
「再起不能にはしている」
「チッ、それが甘いって言ってんだよ」

舌打ちするザクに全く動じず、サスケは「言いたいことはそれだけか」と抑揚のない 言葉を返す。

「なら、もう用は済んだだろう。さっさと水浴びでもなんでもすればどうだ。血生臭い」
「それは俺への当てつけか?」


サスケとザクの戦闘光景は対照的だ。
汗ひとつ掻かず、返り血すら浴びずに、敵を気絶させるサスケに対し、ザクは確実に息の根を止めようと動く為、返り血を浴びることが多い。現に、ザクの身体からは鉄臭い血が酷く匂う。

返り血を浴びるのは二流の忍びだ。殺してはいない事を非難しにきたけれど、実際のところザクはサスケの才能に嫉妬していた。
サスケと自分の力量差を思い知って、ギリ
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ