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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
標的は──?
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無事だったのだ。

そのとある一人の名を、遠山金一という。遠山キンジの兄だ。沈没事件から生還した者曰く、行方不明者となった彼は、乗客員が動乱に塗れるなかで自主的に避難誘導を行い、自らの危険を顧みずに次々と救助していったという。如何にもドキュメンタリー番組にありそうな展開だった。
しかし現実はそんな生易しい話ではなかった。生還者の証言があるにも関わらず、どこをどう間違えたのか、メディアは遠山金一に大々的な批難を押し付けたのだ。
『同じ船に乗り合わせていながら、事件を未然に防げなかった無能な武偵』と。その矛先は彼のみならず、遠山家にまで及ぶようになった。キンジも、その被害者だった。


「それ以降に姿を現さなかった武偵殺しが再度確認されたのが、始業式の日のチャリジャックになるね。セグウェイに、UZIに──あのセグウェイも、備品はただのセグウェイじゃなかったよ。模倣犯にしては手が込みすぎてるし、確実に殺す為の兵装を整えてた。チャリジャックの際にアリアが救出に来てからというもの、武偵殺しは活発化したね。バスジャックも早めの行動が功を奏したものの、車体に仕掛けられていたC4も、確実に人を殺すためのものだろう?」


ここから分かるのは──。そう切り出す。


「武偵殺しがアリアを誘き出し、罠に嵌めたということ。罠と形容するからには、君自身に何かがあるはずだよ。武偵殺しを逮捕しなければならないほどの、重大な事案がね」


実に武偵殺しは聡明な人間だろう。自らの動機を、糊付けした仮面で綺麗に隠せていたのだから。それでいて動機を遂行するために、誘き出すための絶好の餌を、自分自身で用意できていたのだから。それでも過去を辿ると、小さい綻びを生んでしまっていた。
そうして、自分の中で武偵殺しが誰だか、仮定ではあるものの予想が付いてしまっていた。だから、その名を厳粛に告げる。直感混じりの推理にしても、納得のいってしまうその名を。自分たちの身近な存在で、かつ、工作活動が得意な人間ともなれば──思い当たるのは、1人。

とはいっても、まだ曖昧なのだ。酷く曖昧で、不鮮明で、パズルのピースにも成り得ない。
それでも、仮定としては十分すぎるのだから──暫くは、泳がせてみるかな。


「武偵殺しは、探偵科の峰理子。あの子だと思うんだ」
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