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人理を守れ、エミヤさん!
業火の中に
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「アンタには負ける。知ってるか? アンタ、教え子連中にビッグ・ママって呼ばれてるんだぞ」
「なに? ……誰がお母さんか」
「連中が訓練中に心折れそうになって、寂しくて辛くてやりきれない時には、必ず寄り添って慰めてやっていたそうじゃないか。不器用な優しさに触れられて、真剣に尊敬されているようで実に羨ましい」

 スカサハはそれに、満更でもないような……そうでもないような……形容しがたい表情になる。しかし若干の気恥ずかしさはあるのか、ほんのり血色の良くなった顔で咳払いをして、マスターの背中を平手で叩く。
 咳き込む男にスカサハも言い返した。

「お主はお主で、連中にVICBOSS(勝利のボス)などと呼ばれておるではないか。大総統なのかVICBOSSなのかはっきりせい」
「……あのな。それは言うなよ。耳にする度に背中が痒くなって仕方がない」

 この一年で討ち滅ぼした戦士、劣化英霊はどれほどの数に上ったのか、もはや数える事すら億劫である。
 戦闘指揮を何度もこなし、実戦さながらの訓練を潜り抜けて。いつの間にやら渾名が増えていた。
 『人類愛』には今のところ、階級はない。しかしそのBOSSに肩書きがないのは今一座りが悪いという事で大総統などと呼ばれるようになったのだ。が、まあそれは時々口にされるだけで、余り浸透していないのだが。

「いっその事、王にでもなればよいものを」
「寝言は寝て言えよ、スカサハ。俺は王なんて器じゃない。それに――ここはアメリカだぞ。王を自称するど戯けがいたら、一発ブン殴ってやらなきゃならん」

 阿呆らしい冗談に真顔で応じつつ、男とスカサハは大通りについた。すると、

「ジャックー!」

 二人してマザーベースの本営に向かうその途上で、『ジャック』の命名者である少女、ミレイが元気に駆けてきていた。
 見ればその後ろからシータが追いかけてきている。何をしてるんだと首を捻っていると、傍まで来たミレイがひしりと男の腰に抱きついた。

「守って!」
「ん?」
「守ってー!」
「ああ……何してるんだ?」
「鬼ごっこ! っていう遊び! オキタが教えてくれたの!」

 そうか、と微笑んでミレイの頭を撫でる。道理で、シータが中々追い付こうとしなかった訳だ。
 鬼役をサーヴァントがしたら、まだ十歳ほどのミレイでは一瞬で捕まってしまう。相手に合わせて遊んであげていたシータの優しさだ。
 男はミレイの首根っこを掴み、そのままシータに投げ渡した。うにゃぁ!? と猫みたいに悲鳴を上げたミレイがシータの腕に収まる。といっても、ほとんど同世代に見えるので、仲良しな女の子同士にしか見えない。ミレイが「薄情者ー!」と抗議してくるのを聞き流しつつ、男はシータに言った。

「まだラーマの存在は感じるか?」

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