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人理を守れ、エミヤさん!
実働開始だよ士郎くん(下)
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というか考え方に差が出るのもおかしな話ではない。ないが……どうにも、英霊のネロは妙な理想を持っているらしい。

 何せ――

「前から聞こうと思ってたんだ。俺の知っているネロは赤いドレス姿なんだが、どうしてお前は白い衣装なんだ? まるで花嫁みたいだぞ」
「むっ! あれはドレスではない、男装であるぞ!」
「はいはい男装男装」
「んむぅ……雑であるな……こほん。それより何故、余が花嫁のドレスに着替えているのかだと?  ふっふっふ、決まっていよう! それはっ!  余がそういう気分になったからである! ところでマスターの肌の色がだいぶ健康的になったのも、そういう気分になったからか?」
「んなわけあるか」

 ――これだ。

 気分で英霊としての装束がコロコロ変わるのはネロぐらいなもんだと言いたいが、その言動の端々に願望が滲んでいる。
 それはネロらしく微笑ましい願望のように感じるが――どうもやり辛い。何せ俺はネロを友人として見ているのだ。しかしこのネロときたら、まるで……。

「ところでマスターよ。マスター直々に『シェロ』と呼べと言われた故呼んでおったが、それは余ではない余の呼び方であろう? 故にマスター呼びに戻したいと要求する! それと一つ聞きたいが、いいか?」
「まあ……呼び方は強制しないが。それで、なんだ」
「マスター……何やら沖田やスカサハめと良からぬ空気ではないか? というかアプローチとか掛けられてない? 余を差し置いてヒロインレースとか始まっておらぬか?」
「なんの話だ……」

 まるで……。

「惚けるでない! まさかとは思うが、二人ともものにしよう! とか考えておらぬだろうな! 浮気はダメだぞっ。なんか良くない!」
「……アイツらとはそういう関係じゃないって」
「そうかっ! なら余にもまだチャンスはあるのだな? 諦めずともよいのだな! うむうむ、マスターとは中々イケイケな仲になれると踏んでおるからな、余は嬉しい!」
「……」

 まるで……考えたくないが、このネロは俺を恋愛対象として狙っているようではないか。いや狙われてる感はある。キアラを数百倍希釈した感じの感覚だから、割と分かりやすい。
 はっきり言えば、悪い気はしなかった。何せネロはその内面からして美しい女性だ。俺の知るネロとは別人だと割り切って接する事も出来る。出来るが……カルデアのネロとは別人だが、同一人物でもある英霊のネロとそういう関係になるのは流石に気が引けた。仮になったとしたらカルデアの方のネロにどんな顔して会えばいいんだ。

 雪原の上を、上機嫌に両手を広げ、まるで舞台の上にいるようにくるくると回るネロ。それを苦笑して眺めつつ思考する。

 恋愛事に現を抜かしている暇もない。俺もいい歳なんだし、身を固めるのもありなんだが
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