暁 〜小説投稿サイト〜
魔法が使える世界の刑務所で脱獄とか、防げる訳ないじゃん。
第一部
第38話 マフィアの仕事
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の部屋だ。要がどれだけ騒いでも周りの構成員達にバレない様にと、ここが選ばれた。

ジャケットは……羽織っていようかな。移動中だけだけど。
グローブはそのまま。ドレスも黒だから、大丈夫な筈。
一応ハイソックスは……脱いでおこうか。ストッキングにしよう。
コルセットとワンピースは考えなくても分かる。勿論、脱ぐ。

「え、琴葉……生着替え? もう少し……その、隠したりしないの?」
「僕達は御前みたいな穢らわしい目で琴葉様を見たりしない。だから問題無い」

……下着、脱がないといけないのか。やだなぁ。

「響君。少し琴葉を手伝い給え。彼の方はもう大丈夫だよ」
「分かりました。琴葉様、失礼します」
「え、や……このくらい自分で出来るけど……」
「琴葉……?」
「あ、ハイ……」

響が私の後ろに回ったところで、仁が仕切り板を持って来て、私と要の間に立てる。立てるなら私と響の間に立てて欲しかった。


まぁそんな話はどうでもいい。

問題はその後の作戦だった。

「……あら、おじさま。御一人かしら?」
「ん、嗚呼。一人だよ。一緒に飲むかい?」
「よろしいのですか?」
「勿論さ。君みたいな可愛い子と一緒に過ごせるなんて、嬉しいよ」

っっっっっっっっっっきもちわっるい。

相手の年齢は三十代後半くらい。ルックスも体型も、我慢出来ない程ではないが……クサい台詞がなんとも態とらしい。
相手が此方の情報を掴んでいる可能性を捨てない様にしながら、再度仕掛けてみる。

「まぁ、嬉しいわ! じゃあ、私飲み物を取って来ますわ。貴方は此処で待っていて下さる?」
「ありがとう。お願いしていいかな?」

第一段階クリア。標的(ターゲット)との接近に成功。

スタッフに飲み物を二つ貰って、一つに湊さんに貰った気持ちよくなれるおくすりを仕込む。そして、それを標的に渡す。それが次の作戦。
薬入りの方の飲み物を渡せなかったとしても、薬慣れしている私が飲んでも効果は無い。少し意識がぼーっとする程度で収まる。それなら二つに仕込めば良いじゃないかとも思うが、極力薬の効果を自分が受けるのは避けたいので、一つだけになった。

スタッフに声を掛けて、飲み物を二つ受け取る。そして、ドレスグローブの中に隠しておいた薬を、片方のグラスに入れる。そして小走りで標的の元へ戻れば、薬は全て溶けた状態になった。

「ごめんなさい。待ったかしら?」
「いいや、大丈夫だよ。ありがとうね」

標的は薬を混ぜた方のグラスを私の手から取る。そして、カチンとグラスを合わせて乾杯すれば、標的はその飲み物を疑いもせずに飲む。

第二段階クリア。
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