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人理を守れ、エミヤさん!
地獄の門へ (上)
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たいが無理だろう。

 気を取り直して話を続ける。

「目標は道中に逃げている人間がいれば保護し、ケルトがいればゲリラして嫌がらせし、人の多い町に行って情報を得る。全てはそこからだ。ゲリラに関しては『嫌がらせ』に終始して絶対に欲張らん。どんなに好機でも一撃を加えたら即離脱。これを徹底するぞ」
「拝承しました。僕は生憎とこの国の地理には疎いので、お詳しい様子の主殿に行き先はお任せします」
「そうだな。じゃあ北進しオレゴン州を通って、ワシントン州に行こう。ジョージ・ワシントンがケルトを相手に徹底抗戦しているんだよな?」
「はい。主殿と会う前に助けた軍人から聞きました」
「……ワシントンは1781年、つまり去年の事だな。彼はその頃はバージニア州ヨークタウンを包囲し、イギリス軍を降伏させアメリカの独立を抑える試みを終わらせている。ケルトが何時何処に出現したかは不明だが、彼はバージニア州かその近隣の州にいると見ていい。アメリカ軍……今は大陸軍か。この頃のワシントン州は、まだその名ではないが……人口は多く人種も部族も多様だ。多角的な情報を入手出来るだろう。ケルトがやらかしてくれてなければな。道中で得られるかもしれないなんらかの情報で、危険と判断できれば目的地は変更する」

「高度な柔軟性を保持しつつ臨機応変に動くという事ですね」
「高度な柔軟性、臨機応変。いい言葉だ」
「ははは」
「はははははは」

 笑うしかない。

 一人で出来る事は多寡が知れている。一刻も早くサーヴァントを集め、現地勢力と協力体制を作り、ケルトを撲滅しなければならない。
 変化球でケルトが実は魔神柱へのカウンターである可能性も微粒子レベルで存在するがそれは無視して叩き潰す。

 大陸軍と合流するのが最もいい手だが、生憎と物理的に遠すぎる。燦々と照る砂漠を歩きながら今後の事を考えつつ、砂漠の歩き方を思い出していた。
 傍らには、何故か霊体化しない小太郎。冬は近いはずなのに、日差しは強い。夜になれば零度近い気温になるのはこの五日間で分かっていた。ちらりと時計を見る。

「……」
「……あの、主殿」
「……ん? どうかしたか?」
「何か、愁いがあるのですか? 顔色がよくありませんが……」
「……いや。別になんでもないさ」

 背負った戦闘背嚢(バックパック)の位置を直しながら、俺は苦笑した。そう、なんでもないのだ。しかし小太郎はそう感じなかったらしい。やや遠慮がちに、懐から妙なものを取り出す。
 手拭いだ。丁寧に折り畳まれている。

「……気休め、ではなくて。えっと……慰め、でもなくて」
「……なんだ。落ち着け」

 微妙に照れ臭そうな小太郎が可笑しくて、頬が緩んだ。小太郎は誤魔化すように咳払いをして、四角く畳んでいた手拭いを広げる
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