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人理を守れ、エミヤさん!
何度でも蘇る士郎くん!
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「がぁアァああアアア――ッッッ!?!?!?!」

 解き放たれた矢箭の殺傷能力は、確かに限界まで減退させた。例え肉体に直撃を受けたとしてもその鏃は浅く突き立つ程度だろう。
 だが士郎の受けた矢箭は、毒が塗られていた。それも只の毒などではない。最古の毒殺者セミラミスなどが召喚を可能とするヒュドラ、そのヒュドラを超える毒牙を持つ大毒蛇バシュムとすら、到底比較にならぬ真のヒュドラの神毒である。
 ギリシャ神話最強最大の怪物神テュポーンと、ガイアとタルタロスの娘エキドナの間に生まれた――謂わばギリシャの怪物の中で云う処のヘラクレスに相当する存在である本物のヒュドラだ。後世で雑多に見られる雑種蛇とは比較にもならない惑星最強の猛毒は、士郎の持つあらゆる耐性を貫通する。

 英霊ギャラハッドの霊基と楯を持つマシュ・キリエライトと契約している事で、マシュ自身の無意識が彼に割いた多大な状態異常への耐性。士郎がその身に内包する『全て遠き理想郷』の自浄作用。抑止力の端末による、人類の枠組みに於ける最高の生命力――それらをいとも容易く宇宙最悪の神毒は貫いたのだ。
 元より『全て遠き理想郷』は不死性こそ所有者に与えはするが、その苦痛を和らげる訳ではない上に、士郎は聖剣の鞘の全能を発揮できる資質を持ち得ず、老化の停滞や不死に近い生命力を獲得するに留まっている。故に不死身ではない。
 暗殺教団の歴代教主の一人、静謐のハサンの毒すら歯牙にも掛けぬ世界最高の騎士の恩恵も無敵ではない。聖剣の鞘と抑止力の後押しにより死にはしないだろう、しかし――今こそ知るがいい。

 彼の神毒は不死の存在をこそ最も苛む激痛の極致。

 命を奪う程度の毒は生温い。其は心を蝕み魂を腐蝕させる、現行神話、人理史上に於ける窮極の一である。不死の神をも死に追いやり、神々と対等に戦った恐るべき巨人族をも多数屠った魔法の域の毒素は伊達ではない。
 毒矢の被弾箇所は三。腹部、左腕、右脚。着弾した箇所の骨肉は腐敗して、腕は鏃が刺さった程度の微かな衝撃で飛び落ちた。脚は体重を支えられずに崩れ、腹部は溶けた。
 しかし死なない。死なないが、必然的にその明瞭な意識野が白熱する。焼き切れる。

「ギぃィいイイイァああああ――ッッッ!?!?!」

 ――痛死熱圧狂痛寒楽苦死死死死死死――

 冬木の聖杯の泥に呑まれたのとも比較にならぬ絶望と激痛の嵐。神経が焼き切れ理性が蒸発し本能が死を求め肉体が死に蘇生され理性が溶け本能が死に肉体が狂乱し蘇生され死に蘇生され魂が砕け散り修繕され死んで蘇生され――刹那に体感した死と復活は百では足らぬ、千では利かぬ、万で足先に届いたか否か。
 地面をのたうち回り、呼吸すら行えず、その場で陸に打ち上げられた魚の様に痙攣し、口から泡を吹き血を全身の穴か
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