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人理を守れ、エミヤさん!
士郎くんとロマニくん
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わりか? なら仕事に戻れ。暇じゃないだろ。そう言ってもロマニは呆然としたまま立ち尽くしている。……聞こえなかったのだろうか。

「おい」
「……キミは、僕を恨む資格があるんだよ?」
「ない。そんなもの」
「なん、で……」
「なんでも何も今言っただろうが。何度も言わせるな。いいかロマニ。もう一回だけ言ってやる。お前はロマニだ、ソロモンじゃない。いいな? それを忘れるな。お前は人間なんだよ。だから謝るんじゃない」

 呆れて嘆息し机に向き直る。資料は読み終わっていたが、話す事はないという意思表示のために手に取り視線を落とした。
 ロマニは立ち尽くしている。重い静寂があり、啜り泣く声が聞こえた。しかし、それに声は掛けない。許す許さないの話ではない、見当外れな罪悪感を、なんとかしてやる事は出来なかった。
 その罪の意識を、許すと言わないのは――俺の八つ当たりだろう。その見当違いの罪悪感が拭えないというなら、甘んじてこの八つ当たりを受け入れてもらいたい。

 啜り泣きが終わるまで、無言で佇む。ふと或る探し物の天才である人の言葉を思い出した。
 彼は普段煙草を吸わないのだが、精神が不安定な人の前では敢えて吸う事があるのだという。それは煙草を吸うというポーズが、リラックスしている事を示し、それを見た相手の気を緩ませるらしい。
 俺も精神状態の悪い人間と対する機会は多い。故に彼の真似をして煙草を吸う事もある。これはそこそこ効果があるようで、普段は絶対吸わないが携帯している。机の引き出しに入れていたオイルライターと安物の煙草を取り出し、煙草を口に咥え火を点ける。

 吸って、吐く。ゆらゆらと立ち上る紫煙を見上げ、切嗣はこれを精神安定に使っていたのかと思う。俺の心も平坦になる、気がした。なんだかんだで俺も冷静ではなかったのかもしれない。誰も気づかなかっただけで。

 やがてロマニは泣き止んだ。おずおずと、口を開く。

「……煙草、体に悪いよ」
「問題ない。煙草だが、中身は魔術による精神安定の薬効が含まれている。気休めだが、まあそこそこ効果はあったみたいだ」

 吸うか? 煙草を出すと――ボクが吸うのはダメな気がするけど、今回だけ、と。受け取ってくれた。火を点けてやると、思いっきり吸って、思いっきり咳き込んだ。
 苦笑しながら吸い方を教えてやる。そういえば残り本数が少ない。魔術と薬学を混ぜて、闇医者として活動しているフリーの彼女に、カルデアの戦いが終わったら注文しなければ。
 実際体に害はない仕様だ。魔術もそういう使い方ばかりされればいいのにな、と思う。言っても詮無き事なのかもしれないが。

「ごめん。……ありがとう」
「おう」

 灰皿を出しながら、ありがとうという言葉だけを受け入れた。俺は吸い殻を灰皿に押し付け火を消
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