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蜘蛛の神
第一章

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                蜘蛛の神
 アフリカの西、サッカーで有名なカメルーンやセネガル辺りの話である。ここにはアナンシという蜘蛛の姿をした神と言っていい存在がいる。
 このアナンシは今腹を立てていた、そしてどうして腹を立てているのかを友人であるクワガタの神に言っていた。
「全く、最近の蜂達ときたら」
「やんちゃだっていうんだね」
「そうだよ」 
 まさにという口調で言うのだった。
「どうにもね」
「君はまたかい」
「そう、まただよ」
 今度は怒った声になっていた。
「また巣を破られたんだよ」
「本当にまただね」
「あの連中はとんでもない速さで飛ぶから」
 だからだというのだ。
「僕の巣もだよ」
「軽々と突き破ってしまうね」
「あの速さときたら」
「君の巣は元々餌を捕まえる為でもあるのに」
 ただ蜘蛛の巣であるだけでなくだ。
「それがだね」
「軽々と突き破られては」
「面目も立たないうえに」
「いちいち巣を修理しないといけないから」
「困るんだよ、どうしたものか」
 アナンシは前の二本の足を組んで困った顔で述べた。
「この事態は」
「そう言うがこうした時こそじゃないかい?」
 クワガタの神はアナンシに笑って述べた。
「君の機転がものを言うんじゃないかい?」
「君のかい」
「そうだよ、君のだよ」 
 こう言うのだった。
「まさに君の機転が生きる機会じゃないか」
「そういえばそうだな」
 アナンシ自身もクワガタの神の言葉に頷いた、そのうえでこう言った。
「よし、ではだ」
「その機転を生かしてだね」
「そしてだよ」
 まさにと言うのだった。
「あいつ等に仕返しをしよう」
「ではその機転を見せてもらっていいかい?」
「言われずとも見せてあげよう」
 アナンシは誇らしげに言った、自分の巣の中心から今は幹に止まって休んでいるクワガタの神に対して。
「是非共」
「それではね」
「少し待っているんだ」
 こう言ってだ、そのうえで。
 アナンシは早速だった、巣に細工をした。そこにだった。
 蜂が来た、蜂はとんでもない速さでアナンシの巣に向かって来た。だがその巣を見てそうしてアナンシに言った。
「アナンシさん、悪いけれど」
「おお、またか」
「そう、まただよ」
 こう言いつつも飛ぶ速さは落とさずしかも悪びれてもいない。
「突き破らせてもらうよ」
「そうかい、しかしね」
「しかし?」
「今回はどうかな」
 アナンシは蜂に誇らしげに笑って言った。
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