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吸血鬼になったエミヤ
015話 新学期、吸血鬼異変《終》 落ち込む心
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停電での大仕事が終わった翌日のこと、その日シホは学校を休み魔法施設の一角にある魔法専門の医療施設で眠っていた。
そのわけは当然昨夜に発現した吸血鬼としてのシホの人格についてだ。
一緒に休んだタマモがガラス越しに見守る中、専門スタッフ総動員でシホのうちに存在する吸血鬼の人格だけを除去、もしくは封印処理をしている真っ最中だ。

「シホ様…」

タマモはただそれを見守ることしか出来ない事に深い悲しみの感情を宿す。
シホの症例はやはりというべきか『解離性同一性障害』…いわゆる多重人格だった。
考えてみれば二十年もの間、様々なことをされてきたにも関わらずなにも障害を残さないと言うのが稀である話で、シホもその例にもれず二つ目の人格が生まれてしまったことになる。
しかもそれは最悪なことにまさに吸血鬼として堂々とした残忍な人格で、もしシホが抗うことなくすべてをその人格に委ねていたら完全に取り込まれ本物の化け物になっていただろう…と診断したスタッフ達は口を揃えてそう言った。
それを聞いたのはまだ昨夜の事でシホが急患として運ばれてきていたので当然刀子、刹那、龍宮、高音、愛衣の全員も着いてきていてその診断結果に愕然としたのは言うまでも無い。

(どうか私からシホ様を奪わないでください…もう、タマモは大切な人を失うのは嫌なのです!)

両手を握り締めてタマモは祈った。




◆◇―――――――――◇◆




ところ変わってまた学園長は魔法先生全員を招集していた。
そうするように相談したものは葛葉刀子その人である。
突然の学園長室訪問に学園長も相当焦ったそうだがこうしてなんとか無事に会議は開かれた。

「皆のもの、また突然招集をかけてすまんの」
「いえ。それで用件と言うのはやはりシホ姉さん、エミヤの事ですか…?」
「その通りじゃ。刀子くんの願いもあり今回集めさせてもらった」

学園長はそう答えて髭をさするが突然刀子が立ち上がり、

「なにをのん気な事を言っているのですか学園長! それに高畑先生も!…なぜ、なぜ黙っていたのですか!?」

剣呑な表情をした刀子の姿に一同は大いに驚いた。
普段の彼女からはとても想像できない剣幕で二人を睨んでいる。
もし敵同士であったのならすぐ様にでも斬りかかるといった雰囲気を醸し出している。
それに神多羅木が「少し落ち着け…」といつも通りの低音で宥めるがその額には一筋の汗が流れていた。

「刀子先生、それはどういった事かな? まだ状況把握もできていない我らにとってはどう対処すればいいか分からないんだけど…」

明石がそう告げると次第に刀子は息を整えていき「…無礼を働いてしまい失礼しました」といって着席した。
だがやはりどうして…?という疑惑の視線は消えた
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