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レーヴァティン
第八十四話 ローマに戻りその三
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「あと何も知らない、出来ないのにふんぞり返って偉そうに言うのもな」
「しないか」
「それで奥さんに三行半突き付けられて出て行かれた奴知ってるんだよ」
「そうした奴もどうかだな」
「そうだろ、それで奥さんにこれまでのことを感謝するどころかな」
 一緒に暮らしていてその中で恩義も受けてきてた。
「爪切りまで持って行っただったんだよ」
「爪切り?」
 正は彼にしては珍しく表情を出した、眉を顰めさせ言葉に疑問符まで付けた。
「爪切りがどうした」
「だから別れた奥さんが家出る時にな」
「爪切りまで持って行ったとか」
「言ったんだよ」
「爪切りまでお世話になっていたのか、奥さんに」
「ああ、それでもな」
「恩義に思わずか」
 正は眉を顰めさせたまま言った。
「それを他人に行ったか」
「兵器でな」
「そんなものを気にするとはな」
 爪切りの様なものまでとだ、正はさらに言った。
「器が小さい、そしてな」
「無神経だよな」
「平気で他人に言うとはな」
「恩知らずで器が小さくて無神経でな」
「しかも爪切りまで世話になっている位甲斐性なしか」
「そうしたこと全部に気付かなかったんだよ」
 久志が知っているその者はというのだ。
「酷いだろ」
「これまで何をして生きてきた」
「何でも働かないでな」
「家にいたか」
「それで専業主夫をするまでもなくな」
「料理位すればいいと思うが」
「掃除位はしてたらしいんだがな」
 それでもというのだ。
「本当にな」
「何もしてこなかったんだな」
「ああ、本は読んでいたらしいが」
「本を読んでもだ」
 正は目を顰めさせて言葉を返した。
「そこまで何もわからないとな」
「読む意味がないか」
「そうなる、そんな輩は何をしてもだ」
 それこそというのだ。
「恩義に感じられず少しのことで恨まれる」
「そんな奴だな」
「自分を偉いとでも思っていたのだろう」
「実際に馬鹿親にとんでもなく甘やかされて育ったらしいな」
「さもありなんだな」
 正は再び冷徹な言葉で返した。
「奥さんも逃げる筈だ」
「そこまで恩知らずで器が小さくて無神経で甲斐性なしだとな」
「そんな奴の末路は知れたものだ」
「浮浪者になって後はな」
「行方不明か」
「宗教団体に助けられたんだけれどな、一度」
「どうせその団体の悪口も言ったのだろうな」
 正は即座にこう予想した。
「それも何も知らずに」
「ああ、教理を学んでもな」
「まともに入らなかったな」
「それで努力もしないでな」
「その団体の悪口言ったか」
「それで遂にそこもいられなくなって」
 そうしてとだ、久志も忌々し気に話した。
「出て行ってな」
「行方知れずか」
「さて、今はどうなったか」
「不明か」

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