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レーヴァティン
第八十一話 東国その九

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 旅はそれからも続いた、そして遂に水戸に入ってだった。
 当季は水戸の街並を見てだ、こんなことを言った。
「思っていた街と違うのう」
「どうした街だと思っていたでありますか」
「いや、水戸城がでんとあってじゃ」
 こう峰夫に話した。
「それで納豆のお店が多くてじゃ」
「ラーメンやチーズも売っている、でありますか」
「そうした街と思っていたがのう」
 それがというのだ。
「普通の街ぜよ」
「まあ納豆はです」
「納豆だけ売るもんではないのう」
「お店の中に他の商品と一緒にです」
「売ってるものじゃな」
「ですから」
 それ故にというのだ。
「納豆屋というものはなく」
「ラーメン屋もないんじゃな」
「ラーメン屋はどんなものだと思っているでありますか」
「あれぜよ、昔ながらのお店じゃ」
「昔ながらといいますと」
「中華そば屋の感じぜよ」
 商店街にある様な、というのだ。
「そうしたお店だと思っていたぜよ、しかし」
「はい、そうしたお店はこの島では」
「場違いじゃのう」
「あれは二十世紀の日本のお店ですから」
「この島は室町から江戸時代にかけての日本ぜよ」
「ならです」
「ああしたラーメン屋はないぜよ」
「おそらくうどん屋の様な感じで、です」
 そうした店の雰囲気でというのだ。
「あるかと」
「うどん屋じゃな」
「はい、ああした感じで」
「そうなんじゃな」
「チーズは乳製品ですから」
「納豆みたいにじゃな」
「他の乳製品と一緒に売られているかと」
 そうではとだ、峰夫は当季に話した。
「やはり」
「そうなのじゃな」
「ではどれを召し上がりたいでありますか」
「ラーメンじゃ」
 当季は少し考えてから峰夫に答えた。
「こっちの島でも食べたくなったぜよ」
「そちらですか」
「食いたいぜよ」
「そうだな、俺もだ」
 二人の話をこれまで聞いていた英雄も言ってきた。
「ラーメンが食いたくなった」
「おまんもじゃな」
「この島ではうどんや蕎麦、素麺だ」
 麺類はというのだ。
「しかしだ」
「ラーメンはないからのう」
「食ってみたくなった」
「それでじゃな」
「では食いに行こう、ただな」
 こうもだ、英雄は言った。
「日本のラーメンだな」
「ああ、拉麺ではないぜよ」
「ラーメンはラーメンだ」
 今言うのはこの言葉だった。
「拉麺ではない」
「拉麺は中国ぜよ」
 この国の麺だとだ、当季も言った。
「あの国は麺の種類が多いきにのう」
「様々な麺がある」
「パスタと同じぜよ」
「そもそもパスタは中国の麺が起源だしな」
 このことははっきりしている、ただマルコ=ポーロが伝える以前からイタリア半島にはパスタが存在していたという。
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