暁 〜小説投稿サイト〜
緑の楽園
第五章
第56話 再確認
[1/4]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 正直なところ、存在そのものを忘れていた。
 これからのことを考えていたから。
 それに比べれば、あまりに小さなことだったから。

 あ、そう言えば。

 そんな感じだった。



 元領主、オドネル。
 今さっき、肩書きに「元」が付けられた。

 彼が拘束されている部屋には、国王のほか、ヤマモト、女将軍、ランバート、俺、クロ、神、そして警備の兵士たちがいる。
 神を除く全員が、厳しい表情で元領主を眺めていた。

「へ、へ、陛下! し、死刑だけは……」
「……」

 国王が剣を抜く。かなり重い剣だと思うが、剣先はまったくぶれる気配がない。
 拘束されている小太りの男の、「ヒェェェ」という情けない声が、部屋に響く。

「やはりお前だったのか……リクを殺そうと兵舎に隔離して火をつけたのは。許さん」
「ヒェェェ」
「あっ。ちょ、ちょっと待った! 追及するのはそこじゃないでしょ。落ち着いてください」

 俺は慌てて国王の前に入り、胸を押さえて止めた。
 まず、地下都市とのつながりを追及するのが先だ。それを聞かないと、真相が明らかにならない。
 俺はこのとおり五体満足で生きているので、それは別にどうでもいい。

「いいや、そこだ。許さん。斬る」
「ヒェェェ!」
「わー! だから落ち着いて!」

 本当に殺しそうな勢いだったので、今度は強く抱くような格好で止めにかかる。
 俺のことで怒ってくれるのは嬉しいのだが、なぜ肝心なことを聞く前に殺そうとするのか。平和主義ではなかったのか。

 俺も「この人はダメだ」とは思う。
 タケルやヤハラが俺を殺そうとしていたのは、敵対勢力の人間が仕事としてやっていたことだ。特に腹は立たなかった。
 ところがこの領主は、この国の責任ある立場の人間。まったく事情が異なる。そんな人に殺されかけたわけで、怒りがまったくないわけではない。

 しかしながら。まずは細かい事情聴取を、だ。斬ってしまっては解決にならない。

「へ、陛下。ま、待ってください。わ、私が火事で殺そうとしたのは、オオモリ・リク殿ではなく……そちらの……」

 オドネルの視線の先は、俺の足元の少し後ろ側。
 ……え? クロ!?

「あなた、俺じゃなくて……クロを……焼き殺そうと?」
「そ、そうです。事故に見せかけて殺そうと……」

 ……。

 こいつ……。

 血が逆流するというのはこういうことなのか――そう思った。
 国王ではないが、手を出したくなる衝動に駆られた。

 その衝動を抑えるのが、大変だった。
 さっきの国王とのやりとりがなかったら。一対一だったならば。
 本当に殴っていたかもしれない。

「いったい何があったのか、説明してもらいましょうか」
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ