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歌集「冬寂月」
六十一

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 静かなる

  空に零るゝ

   月影に

 君そ見えなむ

     冬そ近しき



 しんと静まり返る夜空…そこに零れたように月明かりが注ぐ…。

 今はもう…全ては遠く、あの夜空に掛かる月のように手は届かない…。

 月明かりの中、あの人が見えた気がした…だが、落ちる影は一つだけ…。


 あぁ…寂しい冬が、またやって来るのだな…。



 宵闇に

  うつすは虚し

   思い出の

 待ち人もなき

    寝待ち月かな



 黄昏時を過ぎても、未だ月は姿を現さない…。

 そんな宵の暗闇は、あれこれと…遠く過ぎ去りし日々を映し出す…。

 後悔ばかりしているような…そんな人生を振り返ったとして、何になろうか…。

 月はじきに、その姿を見せてくれはするだろうが…もう、あの人は現れないのだ…。


 慰めてくれる月は…未だ昇らず…。




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