暁 〜小説投稿サイト〜
緑の楽園
第二章
第21話 古代遺跡
[1/5]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 どういうことだ……。
 いや、どういうことも何も、そういうことなのだろう。
 この復元予想図は、どう見てもさいたまスーパーアリーナだ。
 それ以外の何物でもない。

 ……。
 そうなると、だ。
 「違う世界に、まったく同じ形に設計された建築物が、たまたまありました」という話が通るはずがない。
 今俺がいるこの世界は、異世界などではないということになる。

 では、異世界でなければ何なのか。
 遺跡となっている、さいたまスーパーアリーナ。
 それが意味することは、一つしかない。

 この世界は、遥か未来の日本――そういうことになる。

 だが、未来の日本だとすると……。
 不自然な点もある。
 真っ先に思いつくのは、なぜ文明レベルが俺の時代よりも下がっているのか、だ。

 文明のレベルは、一度上がったら下げられないものだと思う。
 一度便利なモノを知ってしまうと、それを手放すのは容易ではないためだ……より便利なモノが登場するまでは。

 そして、記録が存在する千年前の時点から、文明の進歩するスピードが異様にゆっくりであることにも疑問が湧く。
 江戸時代のように、何らかの事情で進歩を拒否していた、などということがあったのだろうか。
 しかし、孤児院にいたときにこの国の歴史を少し勉強しているが、その知識の中では思い当たる理由はない。

 ……。

 だめだ。
 この件は、落ち着いて考えないと頭が整理できない。
 部屋でゆっくり考えたい。
 いったん忘れよう。

 今一番大事なことは、国王をここで追い返すことだ。



 ***



 遺跡にいた俺ら一行に、国王が予定通り到着したという知らせが入った。
 現場事務所に荷物を置いた後、こちらに来るらしい。

 あ、来た。

 ――護衛が少ない。
 もっとわんさか連れてこいよ……。
 学者は一杯いるようだが、そいつらはあんたのことを守ってくれるのか?

 国王は俺ら一行を発見すると、こちらに走って寄ってきた。

「リク! お前も来ていたのか。ちょうどいい、余と一緒に回――」
「陛下、帰りましょう」

「……? なぜだ」
「危ないからです。城の人達に引き留められませんでしたか?」
「確かに爺には不安だと引き留められたが……。しかし参謀たちには、現場の士気も上がるし良いことだと、むしろ勧められたぞ?」

 参謀たち――。
 主に、軍議のときにいた参謀三人のことを指しているのだろうが……。
 すでに俺の中で、彼らへの不信感は最高潮に達している。

 この前の戦のときもそうだ。
 俺のような素人からも疑問に思われるような稚拙な作戦を用意し、敵の中央突破を許した。
 一歩間違えば、とんでもないこ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ