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緑の楽園
第二章
第17話 ドメリア砦の戦い(2)
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 どうしよう、と考える猶予もない。
 俺は咄嗟に、すぐ足元に転がっていた剣――最初に倒した兵士のものだ――を取ると、真ん中の敵兵に向けて投げつけた。

 ダメージをどの程度与えたかはわからないが、その兵士の足が止まった。
 その瞬間に右の敵兵に向かって踏み込み、打ち込んだ。

 敵兵は剣で受けた。
 俺はそのまま思いっきり力を入れた。
 相手の体が反った。
 そのまま倒し、サッカーボールのように思いっきり蹴り飛ばした。

 左を確認する。
 左の敵兵はヤマモトが食い止めてくれているようだ。形勢は不明。
 中央の敵は……やはり少し遅らせることができただけだ。
 肩から血を吹き出しながら、国王のほうへと向かっている。

 ――行かせてはだめだ。
 俺はその兵士に対し、横から攻撃に向かった。

 敵兵はそれをすぐに察知した。
 こちらに対し、横に払うように剣を振ってきた。
 俺はそれを受けたが。間髪入れずにもう一度振りかぶって、今度は斜めに斬ってくる。

 何とか受けるが、一撃が重い。
 そのままじりじり体重をかけられた。
 重くて返し技が出せない。
 倒されたら、おそらくそのまま殺される。

 まずい――と思ったとき、敵兵の首から鮮血が噴き出た。
 首に噛み付いたのはクロだ。

 ――でかした。

 振りほどこうと体をよじった敵兵の隙をついて、剣を突き刺す。
 胸に深く刺さった。間違いなく致命傷だ。

 敵兵の胸を足で押さえて剣を抜いた後、すぐにヤマモトの状況を確認するために目を向けた。
 生きている。幕の中にいた生き残りの兵士とうまく連携して、何とか切り抜けているようだ。
 もちろん、国王も無事だ。
 よし。

「リク、危ない!」

 そう国王が叫ぶと同時に、俺は反射的に後ろを振り返った。

 ――!
 さっき蹴って転がした敵兵が――。

 間一髪で受けることができた。
 渾身の一撃だったのか、もの凄い音がした。

 その音を合図にするかのように、周りにいた味方全員が飛びかかり、その敵兵を絶命させた。



 ***



 ……。

 すでに、十人くらいは殺している気がするが。
 記憶があいまいだ。

 どれくらい時間が経ったのだろう。
 だいぶ経ったような気もするし、長く感じただけで、実際はほんの少しなのかもしれない。

 幕の中にいる生き残りの兵士は、全員血まみれだ。
 ヤマモトは生きてはいるが、疲労が極限に達しているのか、剣を杖のように使って体重を支えている。
 国王も憔悴の色が濃い。
 クロもだいぶ呼吸が荒くなっている。

 俺の息はとうの昔に切れていた。
 苦しい。
 膝も完全に笑っている。

 
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