第二章
第13話 国王
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紙面には「オオモリ・リクに参上を命ずる」と書かれていた。
おかしい。
俺はこの国が王政であること自体、最近知ったばかりだ。
よって国王とは面識などない。当然向こうは俺の名前を知らないはずだ。
いくら何でも知らないものは呼べるわけない。
どういうことだ?
俺は何かヤバいことをしてしまったか?
王室に対して何か不敬をはたらいて、名前もバレて、そして「オラッ、さっさと釈明しに来いや」とか、そういうパターンだろうか……?
しかし心当たりなどはまったくない。
意味がわからない展開だ。
これからじっくり首都で調査を開始だと思っていたのに、いきなり予定が狂った。
「あの、これって無視したらやっぱりマズいですよね?」
「そりゃあもちろん、まずいじゃろうなあ。そうなったら不敬罪は免れないじゃろう。このわしも、今この場で君から相談を受けてしまった以上は、幇助罪になって診療所ごと潰されそうじゃな。ハッハッハ」
***
初老の医師に入院のお礼をしたのち、仕方なく城に向かった。
きれいに澄んだ堀も、剛健な石垣も、安らかな緑の芝生も、すべてが鬱色に染まって見える。
……何なんだいったい。
わけもわからず職員室に呼び出される生徒のようだ。
門には守衛がいた。
鎧を着ている。フルフェイスではないが兜も着けており、なかなかの迫力。
「あの。オオモリ・リクです……」
「お前がオオモリ・リクか。謁見の間には武器は一切持ち込めぬ。こちらで身体検査をさせてもらうが構わぬな?」
――どうせ拒否権はないんだろ。好きにしてくれ。
まず腰に付けていた剣――町長にもらったものだ――を外し、守衛に預けた。
守衛の目の光が一瞬変わったようにも見えたが、そのまま金庫のようなところに仕舞っていた。
そして俺の全身をペタペタと触り、武器を隠し持っていないことを確かめると、そばに控えていた兵士に、謁見の間に俺を連れて行くよう指示を出した。
クロもひとまずは守衛のところで待機らしい。
「陛下、オオモリ・リクをお連れいたしました」
「入れ」
中から返事が聞こえた。
ずいぶん高い声だ。確か男であり、女王ではないはずなのだが。
謁見の間は広かった。
入った瞬間に突然視界が広がったため、めまいにも似た浮遊感が生じた。
壁には数えきれないくらいの絵画があり、一部では紋章のようなものも飾られている。
天井は高く、遥か上までぶち抜きの構造になっていた。
一番上まできらびやかに装飾されており、まるで宝石の雨を浴びるような感覚に襲われる。
城の外見はシンプルだったのに。まるで正反対だ。
玉座までの道の両脇には
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