第10話
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よく知らないこと。
三つの基準の内、最後の条件がハードルを爆上げした。黒海制圧組は、野良犬というかリリアナのことをある程度知っている。ここから護衛を選抜すれば、その護衛自体がマ・クベの邪魔をすることは明らかだ。
リリアナはぽんぽんと基地を攻略して、勢いで民間人ごと街を焼き払うようなヤバい連中なのだ。ジオン公国軍も開戦当初は派手にやらかしたが、戦争とはいえ、やりたくてやった大量虐殺ではない。海兵隊を始めとして多くの兵が罪の意識に苦しめられているのだ。一方で、少なくともリリアナのリーダーは鼻歌混じりでウィーンを爆砕した。そんな連中を自分達の縄張りに呼びつけるならともかく、小部隊だけを連れて勢力圏ぎりぎりで直接会うなど、頭がおかしくなったか気が狂ったかと判断されるのがオチだ。護衛も必死になって止めるだろう。
だからこそ、マ・クベは護衛をコーカサス制圧組から抽出せざるを得なかった。彼らは黒海制圧組に比べて野良犬、或いはリリアナを知らない。マ・クベが敷いた情報統制もあって、リリアナのことを単なる反政府勢力だと考えている人間が大多数だ。彼らなら野良犬と会うことを止めはしない。見込み通りと言うべきだろう。護衛部隊は野良犬の強さと危険度について理解していなかったし、だからこそ野良犬と会うことを止めなかった。
だが……情報を絞ったのはマ・クベ達だったが、その自分達ですら野良犬の危険度を読み違えていたのではないか? そう思わせる一言が、片言の中に混じっていた。
「……野良犬、幾つか聞きたいことがある」
マ・クベの声は意図的に抑えた平坦なものだったが、それに気付いているのかいないのか、野良犬の声はあっけらかんとしていた。
「なぁに? 美味しいパスタの茹で方? それともラビオリ?」
「食も文化だ、興味がないわけではないが……」
慎重に、探るように。マ・クベの気合いが伝わっているのか、心持ちザクTのモノアイも明るさを増しているようだ。
「そうだな……パスタを茹でると言っていたが、料理が好きなのか?」
「好きだねぇ」
「母親から教わったのか?」
「いや、母さんは料理下手だから。自分で覚えたんだ」
連邦軍が迫っているというのに、暢気な会話を続ける二人。部下達が何も言わずに黙っているのは、部隊用の秘匿回線でマ・クベから状況を見守るように伝えられているからだ。五分や十分で致命的な事態になるわけではないとはいえ、敵が近付いているのに棒立ちというのは、嬉しくもなければ楽しくもない。当たり前だが逆だ。
ジオン公国軍は連戦連勝を続けているとはいえ、連邦軍の主力戦車、61式戦車5型の火力は侮って良いものではない。主砲は口径155ミリで二連装、宇宙を席巻したモビルスーツといえど、直撃すれば一撃でやられてしまう。射程も、ザクの武装
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